【クレー射撃実践編その1】『トラップ競技』をはじめよう!

トラップ競技をはじめようアイキャッチ

 クレー射撃の中でも一番人気なのがトラップ競技です。そこで今回は、トラップ競技の基本ルールから、具体的な競技の流れやコツまでを徹底解説します。

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  1. トラップ競技の射台と、進行のルールを覚えておく
  2. 〝失注する原因〟を探るため、射座への入り方や発砲までの一連の動作は〝ルーティン化〟しておく
  3. スイング射法は「フォロースルーができているか」で判別できる
  4. フォロースルーの確認は、スローモーション動画や高速カメラを使って、自分の射撃風景を撮影する

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目次

トラップ競技を始めよう!

 クレー射撃競技には様々な種類がありますが、中でも競技人口が最も多いのがトラップ競技です。ここでは、日本で最も一般的なトラップ競技のルールである、国際射撃連盟(ISSF)が定めるオリンピックトラップについて解説します。

トラップ射台のつくり

 オリンピックトラップ(以下、「トラップ」)は、トラップ射台と呼ばれる専用のコートで行われます。この射台には5つの射座(ステーション)があり、最大6人まで参加できます。
 競技を行う射手は、射座の上に立って射撃を行います。射撃の順番は1番射座から右方向に移っていき、5番射座が終わったら再び1番射座から射撃を行います。

射座からトラップ放出機までの距離

 射座からクレー放出機までの距離は、正式なルールでは15mです。しかし、練習目的でトラップ競技を行う人のために、5mや10mの地点に射座が設置されている場所もあります。
 クレーが放出される場所はトラップピッド(または「トレンチ」)と呼ばれ、地面の下にあるため射手から直接見ることはできません。しかし、各射座の正面には白い中央表示線があり、これを目印にして放出機の位置を把握することができます。

トラップの点数

 クレーは1射手につき25枚放出され、クレーを1枚撃破するごとに1点となります。全て撃破すると「満射」と呼ばれ、最高点は25点です。
 トラップ競技では、1枚のクレーにつき2発まで発射でき、1発目の発射は「初矢」、2発目の発射は「追い矢」と呼ばれます。クレーの撃破は初矢、追い矢のどちらであっても点数差はなく「1点」です。
 クレーの命中判定は、クレーが完全に粉砕された場合だけでなく、一部が欠ける程度の命中も点数になります。割れ方が微妙な場合は、その射台を管理するプーラーが撃破の判定を行います。

クレーの放出方向と角度

 クレー放出機は、1つの射座に3台設置されており、正面、右、左に向けて配置されています。各クレー放出機は、正面から5枚、右方向から10枚、左方向から10枚のクレーが放出されるよう設定されており、放出される順番はランダムですが、特定方向の放出数が増減することはありません。

 クレー放出機は上下角度にも対応しており、トラップピッドから10メートルの地点で上限3.5m、下限1.5mを通るように設定されています。
 クレーは75~77mの距離に到達する速度で放出されるように決まっているため、低い軌道で放出されたクレーは初速が速く、高い軌道で放出されたクレーは初速が遅くなります

トラップ競技の流れ

トラップ射撃

 トラップ競技の流れは比較的シンプルですが、初めてクレー射撃に挑戦する際は、事前に流れを把握しておくことで、よりスムーズに競技を楽しめます。

競技開始までの流れ

 トラップ射台に入り、プーラーにスコアカードを渡したら、準備を済ませて射台の中で待機します。参加者が揃うとプーラーから名前が呼ばれるので、指定された射座に立ちましょう。
 同じ射台に入る人たちのことを射団と呼びます。その日の混雑状況によっては、初めて会う人と射団を組むこともあるので、プレイの合図があるまでに挨拶を交わしておくと良いでしょう。

射座の移動ルール

 射撃は、以下のルールで進行します。射団が6人以下であれば、右隣の人の射撃が終わったら射座を移動するというルールで動きます。

射座への入り方

トラップ射座に入る人

 トラップ競技に限らず、射撃スポーツでは「失中の原因を探して少しずつ改善していくこと」が上達への道です。そのため、射撃を上達させたいのであれば、〝失中の原因となる要素にバラつき〟が生じないようにすることが非常に重要になります。

射座には、ルーティンで入る

 射座に入る際に毎回異なる位置に立ってしまうと、それが要素のバラつきを生む原因となります。そこで、射座に入るときは常に同じ入り方をするように、自分自身でルーティン(決まった手順)を決めておくようにしましょう。

射座に入るルーティンの例

 以下は、射座に入るときのルーティンの例です。これが唯一の正解というわけではありません。自分なりに意識してルーティン化し、それを守ることが大切です。

STEP
両足を射座の枠線中央に揃えて立つ
STEP
利き手側の足を射座の中心に出す
STEP
逆側の足を射座の端に出す
STEP
足を約45°に開いて、正面を向いて立つ

コールまでの動作と呼吸

 トラップ競技でより良い結果を出すためには、射座での動作やクレーの追い方にもコツがあります。ここでは、コールまでの動作と呼吸について解説します。

コールまでの動作と呼吸を確立する

 コール前の動作も、ルーティンとして確立しておくようにしましょう。例えば、射座に立ったら『深く息を吸い』、『銃口を高い位置に向けて構え』、『照星を中央表示線の約20cm上にセットする』といった流れです。
 準備が整ったら、吸っていた空気を「ハー」や「ホー」といった声に出しながらコールを行います。

放出方向は〝目で追う〟

 初心者によくある失敗として、「クレーがどの方向に飛んでいったかわからない」ということがあります。この失敗を防ぐためには、クレーが放出されたら、まず、クレーがどの方向・角度で飛んでいくかを、しっかりと目で追うようにしましょう。

クレーは〝見て〟も、十分間に合う

「ゆっくりクレーを目で追っていると、銃の振り出しが間に合わない」と感じるかもしれませんが、実際にはそれほど焦る必要はありません。むしろ、しっかりと目で見てクレーを認識することで、体の動き出しに迷いがなくなり、失中の最大の原因となる「スイングの停止」というトラブルを防ぐことにつながります

スイング射法

 クレー射撃は、動いている物体を狙うため、照準をつけたまま体を大きく動かす必要があります。このような射撃方法は動的射撃と呼ばれており、この動的射撃の中でもトラップ競技に適した射法のひとつがスイング射法です。

照準をクレーに合わせて動かす

 スイング射法は、照準をクレーの軌道に沿ってゆっくりと追い始め、徐々に速度を上げていきます。そして、照準がクレーに重なった瞬間に引き金を引きます
 銃は、引き金を引いてから火薬が燃焼し、弾が発射されるまでに、ごくわずかな時間差があります。このわずかな時間差が適度な「見越し」の距離となり、クレーの進行方向に散弾を飛ばすことができます。

フォロースルーが〝証し〟になる

 スイング射法では、引き金を引く瞬間まで体が照準に合わせて動いていなければなりません。なぜなら、照準がクレーに重なる手前で体の動きが止まってしまうと、発射された弾は進行するクレーの後方を通ってしまい、必ず外れてしまうからです。
 この「スイングが停止していないこと」を知るための手段として、フォロースルーの確認があります。フォロースルーは、射撃後の体の動きを指します。スイング射法では体を大きく動かしながらクレーを追うため、射撃後もその慣性が残って体が動き続けます。
 逆に言うと、このフォロースルーが見られない場合は、体の動きが射撃前に減速しているということなので、正しいスイング射法ができていないことを意味します。

フォロースルーの確認方法

「フォロースルーができているかどうか」は、自分自身では判断しにくいものです。そのため、射撃指導員に見てもらうのが確実です。
 射撃指導員から「クレーの後ろを撃っている」という指摘を受けることがありますが、これは「フォロースルーができていないため、弾がクレーの後ろを飛んでいる」という意味です。射撃指導員は、決して高速で飛んでいく弾の軌跡が見えているわけではありません。

フォロースルーは動画撮影で確認ができる

 射撃指導員が居ない場合は、スローモーション動画やバースト写真機能を使って、自分の後ろ姿を撮影しましょう。近年のスマートフォンであれば、かなりの高速撮影ができるため、発射後にフォロースルーができているか確認することができます。

フォロースルーができている射撃の実例

 以下は、高速カメラ(1/200秒、f=11)で射撃の一連の流れを撮影した写真です。写真から『フォロースルーができている』(正しくスイング射法ができている)ことがわかります。

STEP
クレーが放出された直後の銃口の位置
STEP
射撃直後の銃口の位置
STEP
クレー撃破直後の銃口の位置
STEP
クレー撃破後の銃口の位置
STEP
体の動きが停止したときの銃口の位置

フォロースルーができていない射撃の例

 前の例と同様に、高速カメラで撮影した『フォロースルーができていない』(正しいスイング射法ではない)射撃の写真です。発射直後から銃口の位置が変わっていないことから、正しくフォロースルーができていないことがわかります。

STEP
クレーが放出された直後の銃口の位置
STEP
射撃直後の銃口の位置
STEP
クレー撃破直後の銃口の位置
STEP
体の動きが停止したときの銃口の位置

フォロースルーができない場合のヒント

 どうしてもフォロースルーができていない場合は、体が射撃の反動や轟音で委縮している可能性があります。体の防衛反応は意識的に直すのが難しいため、弾を弱装弾に変えて練習したり、反動を感じにくいように銃を調整するといった工夫をすると良いでしょう。

撃破のポイント

トラップのクレーに散弾が命中する

 トラップ競技におけるクレーの撃破タイミングは、「ここで撃たなければならない」という決まりはありません。まずは当てる経験を積み重ねて、どのタイミングが一番ヒット率が高いのかを見つけましょう。その経験を繰り返すことで、当たるリズムを体に覚えさせることが、点数を伸ばすコツとなります。

正面のクレー

 正面に放出されるクレーは、射手から見て、初めに急角度で上昇した後、徐々に平行な軌道になります。そのため、初矢は照準器がクレーを追い越して完全に重なったくらいで発射し、下からクレーが上がってきて照準器に乗ったら追い矢を発射するのが、一般的な方法です。

高い軌道の場合

 正面に放出されるクレーには、低軌道と高軌道の2種類があります。どちらの場合でも初矢は上昇するクレーを照準で追い越した後に発射しますが、高軌道のクレーの方が大きくかぶせて撃つ必要があります。

低い軌道の場合

 低軌道のクレーは上昇角度は緩やかですが、その分スピードが速いため、初矢・追い矢をできるだけ短い間隔で発射する必要があります。

左右のクレー

 左右に放出されるクレーは、スイング射法がしっかりと身についていれば、難しくはありません。照準がクレーに追いついたタイミングで初矢を発射します。追い矢に関しては、「初矢よりも少し下目を狙うのがコツ」と言われています。

高い軌道の場合

低い軌道の場合

追い矢のタイミングは人による

 追い矢を下目に狙う理由は、クレーの軌道が平行から下降に移行するためです。しかし、ベテラン射手の中には、「追い矢を意識的に狙うと体の動きに迷いが生じ、引き止まりが発生してしまう」という意見もあり、追い矢は初矢から間を置かずに連発する人もいます。
 どちらを採用するかはその人次第ですが、経験を重ねて「追い矢が一向に当たらない」という人は狙いすぎて引き止まりが発生している可能性があります。その場合は、追い矢を思い切って放った方がヒット率が上がるかもしれません。

スコアカードの読み方

 クレーが発射された方向と、命中または失中の結果はスコアカードに記録されます。ラウンドが終わると、このスコアカードが返却されるため、どの方向に弱点があるのかを分析に役立てましょう。
 このスコアカードは火薬消費の証明としても重要な書類です。毎年行われる銃砲検査の際には、火薬類の帳簿とともに提出する必要があるため、少なくとも1年間は大切に保管しましょう。

まとめ

  1. トラップ競技の射台と、進行のルールを覚えておく
  2. 〝失注する原因〟を探るため、射座への入り方や発砲までの一連の動作は〝ルーティン化〟しておく
  3. スイング射法は「フォロースルーができているか」で判別できる
  4. フォロースルーの確認は、スローモーション動画や高速カメラを使って、自分の射撃風景を撮影する

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