【クレー射撃実践編その2】『スキート競技』をはじめよう!

 スキート競技は、トラップ競技に次ぐ人気を誇る射撃スポーツです。トラップ競技に比べてルールがやや複雑で、セオリーを理解していないと難しい競技ですが、狩猟の練習として非常に優れています。今回は、スキート競技の基本ルールとセオリーについて解説します。

目次

スキート競技をはじめよう!

 スキート競技は1910年代にアメリカで誕生しました。もともとは、キジや七面鳥といった大型陸鳥の動きを想定して考案されたため、狩猟の練習として最適な射撃スポーツです。スキート競技は現在、国体やオリンピックなどの公式競技として、世界中で行われています。

スキート射場の構造

 スキート競技は、専用のスキート射場で行われます。この射場には、1番から7番までの射座(ステーション)が半円形に配置されており、さらにその中心に8番射座が設置されています。
 射場の両端にはクレー放出機がセットされた建物があり、これらから射場中央のセンターポール上に向けてクレーが放出されます。

ハイハウスとローハウス

 スキート射場には、左手側に位置する建物をハイハウス(プール)、右手側の建物をローハウス(マーク)と呼びます。
 ハイハウスのクレー放出口の高さは3.05m、ローハウスは1.07mとなっています。クレーは必ずセンターポールの直上4.57mを通過するように角度が設定されているため、放出口の高いハイハウスからのクレーは『低い角度』で、放出口の低いローハウスからのクレーは『高い角度』で放出されます。

シングル・ダブルの放出パターン

 スキート競技には、シングルダブルの放出パターンがあります。シングルでは1回のコールにつき1枚のクレーが放出されます。ダブルでは1回のコールで『プール→マーク』、または『マーク→プール』の順番でクレーが放出されます。

ジャパンルールと国際ルール

 スキート競技には、日本国内で行われているジャパンルールと、オリンピックに採用されている国際ルールの2種類があります。この2つのルールではシングルとダブルの射座が異なり、国際ルールではより点数差が出るように、難易度の高い3、4、5番射座でのダブルが多く設定されています。
 また、国際ルールにはタイマー制度があり、射手のコールからクレーが放出されるまでの時間がランダムになるルールがあります。

射撃数と得点のルール

 得点はクレー1枚撃破ごとに1点であり、ダブルの場合には連続で2枚撃破すると2点を獲得できます。1枚だけ撃破した場合は1点です。一つのラウンドで放出されるクレーの合計は25枚で、全て撃破すると満射の25点です。
 なお、射撃は1枚のクレーに対して1回行います。ダブルでも1枚のクレーに対して1回のみ射撃が可能であり、同じクレーに連続で発射することはできません。

スキート競技のコツ

スキート競技を上達させる最大のコツは、各射座ごとに自分の「当たるリズム」を見つけることにあります。そのためには、射座に足を踏み入れる瞬間から引鉄を引くまでの一連の動作を常に一貫して行えるよう練習しましょう。

射座ごとのスタンス

 スキート競技におけるスタンスは、トラップ競技と同様に足を肩幅に開き、射座の中心から約45°の角度で揃えます。トラップ競技ではクレーが遠ざかるためやや前傾の体勢を取るのに対して、スキート競技ではクレーが様々な方向に飛ぶため、より自然体で立つことが推奨されます。
 射座での立ち位置は、基本的に射座の中央が一般的ですが、特に2番、3番、5番、6番の射座では、プールとマークの両方に向けて銃をスムーズに振れるように、射座の左側に少し後ろに位置すると良いでしょう。
 どのようなスタンスを取るにせよ、射座に入る際は常に同じ手順で足を踏み入れるようにしましょう。毎回体の向きや足の位置を変えていると、「当たるリズム」を見つけ出すうえでの不安定な要素となってしまいます。

初めに銃口をホールドポイントに向ける

 スキート競技では〝コールしてから据銃する〟というルールがありますが、何の準備もなく据銃をしても、飛んでいくクレーに上手く照準を合わせることはできません。そこで射座に立ったらコールの前にいったん据銃姿勢をとり、ホールドポイントに銃口を向けましょう。
 ホールドポイントに銃口を向けたら、銃床を胸のあたりに下ろして、視線はクレー放出口に向けます。そして、コールを行ってから迅速にグリップを引き上げて据銃姿勢を取り、クレーに照準を追従させていきます。なお、ホールドポイントの場所は各射座によって変わります。詳しくは後に解説をします。

リード射法

 スキート競技においては、動的射撃の一種であるリード射法が有効です。この射法は、クレーの軌跡に沿って照準を移動させていき、一定のリード(見越し距離)を付けた状態を維持する射撃方法です。
 トラップ競技で解説した動的射撃の一種であるスイング射法では、豪快に体をスイングさせて「照準がクレーに被った瞬間に撃つ」という方法でしたが、リード射法では見越し距離を付けた状態で照準を移動させることで、クレーを確実に〝狙う〟ことができます。よってスイング射法よりも射撃に再現性を持たせることができるため、軌道にランダム性の無いスキートにおいて適した射法とされています。

タイミング射法にならないよう注意

 リード射法で注意しておかなければならないのが、タイミング射法(待ち撃ち)にならないようにすることです。タイミング射法とは、動いてくる標的の進行方向上に照準を固定しておき、特定の距離まで標的が近づいてきた時点で引鉄を引くという〝静的射法〟の射撃方法です。
 この射法では、標的との〝距離〟という定量的な基準で照準を付けるリード射法に対して、体の調子や精神状態によって変化するタイミングに任せる必要があるため、射撃に再現性を持たせることが難しくなります。

リード射法ができているか自己チェックするの方法

 タイミング射法になっていないか確認をする手段として、銃にカメラを搭載する方法があります。このカメラはガンカメラと呼ばれており、上下二連式の場合は下銃身に挟むようにして取り付けます。このカメラの映像を後で見返すことで、自分の射撃がタイミング射法になっていないかを確認することに加え、各射座でのリード距離がどのくらいになっているのかを復習することができます。

撃破のポイント

 ここでは、各射座におけるホールドポイントと、リード距離について解説します。なお、リード距離は使用する実包の速度、照準器の高さなどによって微妙に変化します。そのため、ここで解説することはひとつの「目安」として覚えてもらい、実際の射撃で〝当たった経験〟を繰り返すことで、自分自身の最適なリード距離を見つけてください。

1番射座

プール:クレーは頭の真上から放出されるため、ホールドポイントは『センターポールの直上』にし、視線も少し上向きで準備します。リードは必要ないので、照準器にクレーが乗ったタイミングで引鉄を引きましょう。

マーク:クレーが真正面から放出される向かい矢です。ホールドポイントは『放出口』に設定し、リードは『クレーの2から3個分先、約30cm』を目安に照準を合わせます。

ダブル:プール⇒マークの順番です。ホールドポイントは『センターポールの真上』に構えてコールし、プールのクレーを撃破した後、マークのクレーを水平に動かして撃破します。

2番射座

プール:ホールドポイントは『プールとセンターポールの4分の1』あたりにおき、高さは『放出口と水平』に設定します。リードは『クレー1個分』程度です。

マーク:ホールドポイントは『マークとセンターポールの3分の1』に設定し、リードは『60cm程度取る』ことが一般的です。

ダブル:プール⇒マークの順番です。ホールドポイントはプールと同じ位置で、フォロースルーをしているとマークのクレーが視界に飛び込んでくるので、照準を「>」状に切り返します。

3番射座

プール:ホールドポイントを『放出口とセンターポールの3分の1』程度の地点に設定します。リードは『約1メートル』とされています。

マーク:ホールドポイントをプールと同様に『センターポールと放出口の3分の1』の地点に置きます。リードは『約1メートル』とされています。

ダブル(国際ルール):プール⇒マークの順番です。ホールドポジションはプールのシングルと同じで、センターポールの手前付近で撃破します。プールのクレーを撃破後に、センターポール直情をマークのクレーが通過するので、照準を切り返してマークのクレーを撃破します。

4番射座

プール:ホールドポイントの位置は『放出口とセンターポールの3分の1』、高さは『放出口とほぼ同じ高さ』に設定します。リード距離は『1m20cmほど』が目安です。

マーク:ホールドポイントは2番射座とほぼ同じで、『放出口の高さで3分の1あたりの距離』にします。クレーが放出されたら照準を追いかけていき、センターポールの直上で撃破します。リード距離は『1m20cmほど』が目安です。

ダブル(国際ルール):プール⇒マーク、マーク⇒プールの両方あります。初矢をセンターポールの手前で撃破したら、腰からブレーキをかけて同じ軌跡を通るように銃を切り返します。

5番射座

プール:ホールドポイントを『プールとセンターポールの4分の1の距離』に置き、高さを『放出口とほぼ同じ高さ』に合わせます。リードは『約1メートル』とされています。

マーク:ホールドポイントを『放出口とセンターポールの3分の1の距離』に置きます。照準を上げながらセンターポール手前付近で撃破します。リードは『約1メートル』とされています。

ダブル(国際ルール):マーク⇒プールの順番です。ホールドポイントはマークと同じ位置に置き、センターポール手前で撃破します。

6番射座

プール:ホールドポイントを『放出口とセンターポールの3分の1の距離』に置き、高さを『放出口とほぼ同じ高さ』に合わせます。リードは「60㎝」程度とされていますが、距離による散弾の広がりを考慮して、大胆にとってもよいとされています。

マーク:ホールドポイントを『放出口とセンターポールの3分の1』程度の距離に置きます。リードは『クレー1個分』と短めとされています。

ダブル:マーク⇒プールの順番です。ホールドポイントはマークと同じ位置に置き、センターポールの手前で撃破します。

7番射座

プール:ホールドポイントを『放出口と同じ高さで水平方向に5m』地点に置きます。撃破ポイントはセンターポールを過ぎたあたりです。リードは「クレーの2から3個分先」が目安です。

マーク:ホールドポイントを『センターポールの直上』に、高さは『プールの放出口よりも少し高い位置』に置きます。リードは気にする必要はありません。

ダブル:マーク⇒プールの順番です。ホールドポイントはマークと同じように『センターポールの直上』に置き、マークが通過したら撃破します。次にプールのクレーが視界を横切るので、水平に移動させて撃破します。

8番射座

プール・マーク:ホールドポイントを『放出口の2mほど』に置き、高さを『放出口』に合わせます。リードを取る必要はありません。撃破点はセンターポールとの中間地点です。

まとめ

  1. スキート競技は各射座でクレー放出機との相対的な位置が変わるため、射座ごとにクレーが飛んでいく方向が変化する
  2. コールをする前に銃口をホールドポイントに向けておく。各射座におけるホールドポイントの位置を記憶してくこと
  3. リード射法を行う場合は、各射座ごとのリード距離を記憶しておくこと

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この記事を書いた人

学生時代に空気銃競技をはじめ、20代でクレー射撃を始めました。狩猟はやっていません。火薬代が高騰しすぎていつも金欠。

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