「ムダ毛」は決して無駄とは限りません。狩猟において重要な「体毛」の話

狩猟の仕事を終えると、私はよくサウナに向かいます。これは単純にサウナが好きというのもありますが、体に付着している可能性があるマダニなどの寄生虫を取るという目的もあります。ところが最近、ふと気になることが出てきました。

「若い人の体にムダ毛がまったくない……!」

濃い・薄いといった話ではなく、本当に「つるつる」。男性脱毛が広がっていることは耳にしていましたが、実際にここまでとは。しかし、狩猟という視点で見ると、じつは体毛には見た目以外の大切な役割があるのです。

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狩猟で体毛が重要になる理由

先日、狩猟ツアーでガイドをした際、参加者にスタイリストの方がいました。このムダ毛の話題を振ってみると、

「男性の脱毛は本当に増えていますよ。サッカーやバレーをやる若い人は、スネだけでなく全身を脱毛している人も多いです」

とのこと。スポーツの世界でも「毛がないほうが美しい」「ケアが楽」という理由で脱毛が進んでいるそうです。

マダニが進む経路が長くなる

狩猟の現場では、マダニをはじめとする寄生虫との戦いが避けられません。
マダニは体に付着すると、脇や股など皮膚の薄い場所に入り込み、そこから血を吸います。
そこで重要となるのが体毛です。

体毛があると、マダニは毛を避けるようにして進みます。そのため移動距離が長くなり、人は違和感に気づきやすくなります。さらに毛に触れることで、体が「何かがいる」と感知しやすくなるのです。

つまり体毛とは、体に寄生虫などの異物が付着した際にアラートを出す「センサー」の役割を果たしているわけです。ムダ毛と言われがちな体毛ですが、感染症対策という観点では、むしろ必要な装備ともいえるのです。

「自分には関係ない」と思っていたことが必要になることもある

学生時代、私は車の免許を取るときに迷わず「オートマ限定」を選びました。「バイクでミッション操作は知ってるし、マニュアル車なんて乗ることはないだろう」そう思っていました。
しかし、狩猟を始めてからは、マニュアルの軽トラが相棒です。
ぬかるんだ山道や荒れた地形では、細かいクラッチ操作が欠かせないからです。

今後、公衆衛生が崩壊したらどうなる?

人生には「必要ないと思っていたものが、ある日突然必要になる」ことがけっこうあります。
体毛も、もしかしたらその一つかもしれません。
もし将来、経済状況の悪化などで公衆衛生が低下すれば、寄生虫が媒介する感染症のリスクは高まります。
狩猟をしない人でも、野外での安全を考えるうえでは、体毛の存在が保険になるかもしれません。

「何が求められる時代になるかは、誰にもわからない。」

そんな視点で見ると、「ムダ毛」という言葉そのものが、案外“思い込み”なのかもしれません。

環境によって美的意識も変わる

ウソか本当かわかりませんが、そのスタイリストの方いわく、政治や経済が不安定になるほど「毛のある男の方がモテる」のだそうです。
実際に、情勢が安定していた江戸時代には、男性の間で脱毛が盛んに行われていたという話もあります。
毛の価値は、時代の空気に左右されるのかもしれません。

見たいけど見れない

・・・と。そのようなことを考えながらサウナに入っていると、若い人たちのつるつるした肌にどうしても目がいってしまいます。
しかしちょっと待て!あまり凝視していると、
完全に「そっち系の人」に見えてしまうのではないか!?

「もっと観察したい……できればムダ毛の重要性を説きたい!」

そんな葛藤と戦いながら、私は頭にかぶせたタオルの隙間から、チラチラと視線を送るのでした。

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