知識試験と適性試験に合格したら、次はいよいよ実技試験です。狩猟免許でつまずく9割の人は、この実技試験で落ちます。気を引き締めてのぞみましょう。
実技試験の出題内容
免許区分 | 試験の項目 |
---|---|
第一種銃猟 | 目測4問(300m,50m,30m,10m) 散弾銃の点検、分解、結合 散弾銃の射撃姿勢 団体行動時の銃器取扱い 休憩時の銃器取扱い 第二種と同様の試験 鳥獣判別16問(鳥類・獣類) |
第二種銃猟 | 目測3問(300m,30m,10m) 空気銃の点検 空気銃の射撃姿勢 鳥獣判別16問(鳥類) |
わな猟 | 違法わなの判別6問 わなの架設 鳥獣判別16問(獣類) |
網猟免許 | 違法網の判別6問 網の架設 鳥獣判別16問(鳥類) |
実技試験は免許区分に応じて試験項目が決められています。それぞれ受験する免許区分に応じて対策を立ててください。
実技試験の評価方法
試験の評価方法は100点を持ち点とした減点方式で評価され、試験項目をすべて終了した時点で70点以上残っていたら合格です。
減点される条件(事項)もあらかじめ公表されているので、各種の項目の中で説明をします。減点事項の中には「-31点(即不合格)」もあるので、十分に注意しましょう。
実技試験は結構“待たされる”
実技試験の順番は、受験者の多さや試験官の数などでかなり変わります。いちおう目安は17時ぐらいに終わるはずですが、過去に「夜の9時までかかった!」や「次の試験項目までに1時間待たされた」なんて声も聞いたことがあります。試験日の日程には余裕を持って、あと、“暇つぶしグッズ”も持って行ったほうがよいでしょう。
『距離の目測』試験
第一種、第二種で課せられる『距離の目測』試験は、『道具を用いずに距離を当てるテスト』です。なんだか物凄く難しそうに思えますが、出題される距離は第一種の場合「300m、50m、30m、10m」の4つ、第二種では「300m、30m、10m」の3つに限られます。
減点事項
事項 | 減点数 |
---|---|
正しい距離を答えられなかった | 5(毎) |
距離の目測試験では、答えられなかった or 誤った回答をした数だけ「-5点」されます。第一種銃猟では4問、第二種銃猟では3問出題されるため、すべて失敗すると「-20点」、「-15点」になります。これはピンチッ!
なので、“どうしてもわからない場合”は全部「30m」と答えておきましょう。必ず1問は正解するので少しは傷が浅くなります
距離の目測の出題方法
出題方法は場所によって大きく違い、例えば野外に出て広場に並べている三角コーンを指さして「手前から○個目の距離は何メートルですか?」と聞かれたりします。
野外に出れない試験会場では、試験官が窓の外を指さして「あの電柱までの距離は何メートル?」と聞いてきたりします。
試験は「300m、50m、30m、10m」なので、このいずれかで答えてください。「33m」みたいな細かい数字には絶対になりません。
予備講習で“教えてくれる”
距離感に慣れない人には難しいテストですが、予備講習では“事前に”出題方法と距離を教えてくれます。予備講習を受けていれば落とす人はいないはずです。
『銃の点検』試験
この項目では模擬銃を使って銃の点検を行います。点検項目は大きく6つ。それぞれの部分を手で触れたり軽くひねったりしてみて「異常なし!」と大きな声で指差し確認をしましょう。
減点事項
事項 | 減点数 |
---|---|
点検ができなかった | 31 |
点検が円滑ではなかった | 10 |
銃口を人に向けた | 10(毎) |
各操作をおこなうさいに、実包の有無、銃腔内の異物の有無を確認しなかった | 5(毎) |
用心鉄の中に指を入れた | 5(毎) |
減点事項は上表のとおりです。試験を通して「○○ができなかった」場合は‐31点となり、その時点で試験終了となります。最低限、その試験で「何をやるか」は覚えておきましょう。
テストに制限時間は設けられていませんが、あまりに時間がかかりすぎると「円滑ではなかった(-10点)」として減点を受けます。とはいえ「できなかった」ら一発不合格になるので、緊張して頭が真っ白になってしまったら「ちょっと時間をください」と申告して頭の中を整理しましょう。
使用する銃
試験に使用される銃は“やっかい”なことに、都道府県によって使用されるタイプが異なります。独自に調査をしたところ、最も多く使用されていたのは散弾銃で水平二連式、空気銃でマルチストローク式でしたが、セミオート式散弾銃やプレチャージ式空気銃、また『複数ある銃の中で一つ選んでも良い』といったところもありました。
これらのしくみをすべて網羅して説明するのはさすがに長くなるので、やはり予備講習で使用される銃をあらかじめ触っておくことは試験対策に必須といえるでしょう。
点検する項目
- 先台
- 銃床
- 銃身
- 安全子
- 開閉レバー(セミオート式の場合は遊底)
- 銃身内部
銃の種類によって違いはありますが、点検ポイントは6つあります。順番はどれからでも構いませんが、はじめは外観から「先台」、「銃床」、「銃身」を。次に「安全子(セーフティロック)」をカチャカチャと動かして確かめ、「開閉レバー」を開いて「銃身内部」の確認をするとよいでしょう。
点検時のポイント
用心鉄に指をかけてはいけない!
銃を扱うすべての試験に共通して、引き金には指を入れないようにしましょう。
引き金の周りにある金具は用心鉄(ようじんがね)と呼ばれており、試験ではここに指が触れるたびに5点減点されます。連続で触れると点数がゴリゴリ削られるので、銃を持つ手はギュッと握り、無意識に指が伸びないように注意しましょう。
『やっていること』を試験官にアピールする
試験では、やっていることが試験官に『聞こえていない』や『見えていない』では意味がありません。なので、点検時は黙々と作業をするのではなく、“大げさ”に点検をしていることをアピールしましょう。恥ずかしがってはいけませんよ!
点検をしすぎてマイナスになることはない
もし点検するポイントを忘れてしまった場合は、目に付いた場所をすべてチェックしましょう。この試験では「点検していない」という減点事項はありますが「点検“しすぎている”」という減点事項はありません。
ただし、引き金にだけは触ってはいけないので注意してください。
銃身内は見るたびに「実包なし!異物無し!」
銃を扱う試験項目では、スタートしたら毎度銃身内をのぞき込んで、「実包なし!異物なし!」と大きな声を出して指差し確認をしましょう。
こちらも「チェックしすぎ」という減点事項がないので、1つの試験項目に2度、3度銃身内チェックをしてもかまいません。忘れて減点されるぐらいなら“執拗に”チェックをした方が得策です。
銃口の先には要注意!
銃を手に取ったときは、銃口の向きに注意しましょう。銃口が人(試験官、またはグループで試験を受けているときは周りの人)に向くと、向けるたびに10点という大減点されます。
銃は基本的には銃口を上か下に向け、水平に向くことがないように心がけましょう。
終えたら「おわりました」と告げる
すべての試験項目に共通することですが、何か作業が終わったら「完了しました」と申告しましょう。いつまでも何もいわずにいると「円滑ではない」として減点を受ける可能性があります。
銃の点検が終わりこの時点で点数が残っていたら、散弾銃の場合は『銃の分解・結合の試験』へ、空気銃の場合は『射撃姿勢の試験』へ移行するむねが試験官から告げられます。
『銃の分解・結合』試験
第一種銃猟の場合は点検の後に、銃の分解・結合試験を行います。銃の分解(テイクダウン)は、水平二連式の場合は『先台・銃身・本体の3つ』のパーツに、セミオート式の場合は『先台・キャップ・銃身・本体の4つ』のパーツに分解します。
減点事項
事項 | 減点数 |
---|---|
分解・結合ができなかった | 31 |
分解・結合が円滑ではなかった | 10 |
操作が不確実だった | 5 |
操作が粗暴だった | 5 |
銃口を人に向けた | 10(毎) |
各操作をおこなうさいに、実包の有無、銃腔内の異物の有無を確認しなかった | 5(毎) |
用心鉄の中に指を入れた | 5(毎) |
銃の分解・結合の試験では先の点検時と同じく、銃口を試験官に向けたり、用心鉄に指を入れたりしないように注意しましょう。
「操作が不確実」とは、よくわからずに銃をガチャガチャさせていたら減点されます。「操作が粗暴」というのは、分解したパーツを放り投げたりすると減点されます。一挙手一投足を丁寧に行いましょう。
分解・結合のポイント
なにはともあれ「実包なし!異物なし!」
試験が開始されたら、まずは開閉レバーを動かして(セミオート式の場合はボルトを引いて)薬室(弾を入れるところ)を開きます。そのあと点検項目でもやったように「実包なし!異物なし!」と指差し確認をしましょう。
分解は銃によって異なる
水平二連式の場合はレバーを開いて銃身の噛み合いを外し、先台の付いているレバーを引いて分解します。セミオート式の場合は先台のキャップを外し、先台を外したあとに銃身をねじって取り外します。
文字で書くと難しいですが、一度操作をしてみると、そう難しいことではありません。ただし、模擬銃は古くなった銃を再利用して作られた銃なので「立て付け」がかなり怪しいものもあります。なかなか噛み合いが外れなかったり、レバーが固かったりするので、予備講習で必ず何度か練習をしておきましょう。
分解後、結合後は「終わりました」と告げる
銃の分解が終わったら、すべてのパーツを机の上に並べて「分解を終わりました」と告げましょう。試験官から「では、結合してください」と告げられるので、銃をもとの形に結合します。
銃の結合が終わったら、薬室を開けた状態にしてテーブルに置き「結合を終わりました」と告げます。この時点で点数が残っていたら、次の射撃姿勢の試験に移るむねが試験官から告げられます。
『射撃準備』試験
散弾銃は銃の分解・結合の後、空気銃は銃の点検後に、射撃姿勢のテストを行います。銃をしっかりと構えて「発射の準備ができました!」と告げましょう。試験官から反応があったら引き金を引き、「カチン!」(空気銃の場合は「パンッ!」と空気が噴き出る)という音が鳴ったら「発射しました」と告げましょう。
散弾銃の場合は弾を取り出して試験終了です。空気銃の場合は脱包はないので、射撃姿勢を解いて「終わりました」と告げましょう。
散弾銃の発射準備・減点事項
試験がスタートしたら、「弾を装填します!」と試験官に伝え、銃を手に取りましょう。このとき銃の薬室は開いている状態のはずなので、テーブルに置いている模造弾(ダミーカートリッジ)をすべて薬室に入れます(この操作のことを『装填』といいます)。薬室を閉鎖して「準備ができました!」と試験官に伝えます。
散弾銃の減点事項
事項 | 減点数 |
---|---|
装填ができなかった | 31 |
装填が円滑ではなかった | 10 |
銃口を人(試験官)に向けた | 10 |
用意された模造弾をすべて装填しなかった | 5(毎) |
銃の薬室を粗暴に閉鎖した | 5 |
装填する動作が不確実だった | 5 |
各操作を行うさいに、実包の有無、銃腔内の異物の有無を確認しなかった | 5(毎) |
用心鉄の中に指を入れた | 5(毎) |
散弾銃の発射準備(装填)に関する減点事項は上表のとおりです。太字以外は先の「銃の点検」や「分解・結合」と同じ減点事項になります。銃口を試験官に向けたり、用心鉄に指を入れないように注意しましょう。
散弾銃は模造弾をすべて入れる
散弾銃の場合は、机の上に模造弾が2発以上置かれています。発射準備をするさいは、必ずこの弾をすべて装填してください。もちろん、弾を入れる前に「実包なし!異物なし!」を忘れないように。模造弾をすべていれたら薬室を閉鎖します。
上下二連の薬室閉鎖のしかた
上下二連銃であれば折っている状態から元の形に戻して閉鎖しますが、このとき“荒っぽく”操作すると減点されます。
セミオート式の薬室閉鎖のしかた
セミオートの場合はボルトを引いて薬室を開いた状態で弾を1発入れ、銃下側の口から2発目以降の弾を滑り込ませて装填します。
すべての弾を装填したら、銃の右側にラッチボタンと呼ばれるスイッチを強く押し込むと自動的に薬室が閉まります。「ガシャン!」と大きな音がなりますが、これはそういう仕様なので減点にはなりません。
空気銃の発射準備・減点事項
空気銃の場合は銃の発射準備段階で、空気銃内に空気を貯めるという操作が必要になります。この操作方法は銃の種類によって違いがあります。
多く都道府県ではマルチストローク式と呼ばれる空気銃が試験用の銃に使用されているため、銃がいくつか選べる状況であれば、このタイプの空気銃を使って試験を受けましょう。
空気銃の減点事項
事項 | 減点数 |
---|---|
圧縮などの装填操作ができなかった | 31 |
圧縮などの装填操作が円滑ではなかった | 10 |
圧縮操作などが不確実だった | 5 |
圧縮操作などが粗暴だった | 5 |
装填する動作が不確実だった | 5 |
銃口を人(試験官)に向けた | 10 |
各操作を行うさいに、実包の有無、銃腔内の異物の有無を確認しなかった | 5(毎) |
用心鉄の中に指を入れた | 5(毎) |
マルチストローク式はポンピングを4回行う
マルチストローク式の空気銃では、先台を握ってレバーを拡げたあとに力を入れて元の位置に戻す作業を4回ほど行います。
利き手で銃の先台(写真の木製の部分)、反対の手で銃本体(写真ではスコープを握っているが、試験では本体)をしっかりと握る
先台を引っ張ると、レバーに沿って先台が開く。レバーが完全に伸び切る位置まで引っ張る。
先台をもとの位置に戻す。このとき空気が銃本体に入っていくので、拡げるときよりも力が必要になる。
先台を①の状態まで戻したら、再び②を行い銃内に空気を溜めていく。
4回目はかなりレバーが固くなるので、力を込めてレバーを押し込む。
空気の充填が終わったら、銃身の後ろにあるボルトを回して手間に引っ張ります。すると、弾を入れる薬室が現れるので、「実包なし!異物なし!」の指差し確認を行いましょう。
このあと弾を装填するのですが、空気銃には模擬弾というのは存在しません。なので「弾を装填します!」と試験官に伝え、弾を入れる“フリ”をしてください。
「弾を入れました」と告げたら試験官から何か反応があるので、同じ要領で薬室を閉鎖して「準備ができました」と告げましょう。
空気銃の試験で出る可能性があるスプリングピストン式
空気銃の試験ではもう一つ、スプリングピストン式の空気銃が出る可能性があります。これはマルチストローク式のように4回ではなく、レバーを1回だけ折って操作をします。
マルチストローク式よりも簡単ですが、スプリング式には「ブレイクバレル型」、「アンダーレバー型」、「サイドレバー型」の3種類あり、操作方法が違います。なのでマルチストローク式を使うのが安全です。
ブレイクバレル型の場合、レバーの代わりとなる銃身を折ると薬室が現れます。そこで「実包なし!異物なし!」をして弾を入れる“フリ”をし、銃身を戻して試験官に「完了しました」と伝えましょう。
『射撃姿勢』の試験
射撃姿勢は、まったく“トンチンカン”な構え方をすると一発不合格になります。そうでなくても、銃の持ち方が怪しかったり、銃を構えた状態でフラフラしていると減点されます。
減点事項
事項 | 減点数 |
---|---|
射撃姿勢・脱包ができなかった | 31 |
射撃姿勢・脱包が円滑ではなかった | 10 |
装填された模造弾をすべて脱包しなかった | 5 |
水平射撃の姿勢をとった | 5 |
不安定な射撃姿勢をとった | 5 |
銃口を人に向けた | 10 |
各操作を行うさいに、実包の有無、銃腔内の異物の有無を確認しなかった | 5(毎) |
用心鉄の中に指を入れた | 5(毎) |
銃を正しく構えるコツは『肩付け』と『ほほ付け』です。ゆっくりでいいので動作をひとつずつこなしていきましょう。
正しい銃の構えかた
銃はまず、利き手でグリップをしっかりと握り、反対の手を先台に添えます。この状態から銃を肩の高さまで引き上げましょう。
持ち上げた状態から脇を締め、銃の底面(バットパット)を肩の付け根にグッと押し付けます。
銃を肩に押し付けたら、銃床の上面(ベンド)に「ほほ肉」を押し当てます。
このとき「ほほ骨」にベンドがグッと当たるように意識しましょう。頭が傾いていたり、前傾になっていたりしてはいけません。
立ち方
肩付け、ほほ付けが決まったら、次に足の置きかた(スタンス)を決めます。スタンスはまず、足を肩幅に開いて利き手と反対側の足を少し前に出します。
このとき体の重心が体の中心よりも少し前のめりになるようなイメージで構えてください。下腹がでていたり、腰が引いていたりしてはいけません。
照準と引き金の引き方
銃を構えてスタンスが決まったら「準備ができました」と告げましょう。試験官から「弾を発射してください」と告げられるので、照準(狙い)をつけて引き金に指をかけます。
射撃時は上を向いて構える
試験会場内の壁には上下に2枚の「印」が張られているので、照準をつけるときは上の印を狙ってください。「下」(銃身と水平になる位置)の印に向けて照準を付けた場合は「水平発射」という危険な射撃行為として減点となります。
「どっちつかず」で判断されると困るので、構えるときは“露骨”に銃身を持ち上げ、上の印を狙っていることをアピールしてください。
引き金が引けないときは焦らずセーフティを確認
射撃姿勢が完了したら「完了しました」と告げます。試験官から「撃ってください」と告げられるので、引き金を引きましょう。
散弾銃の場合は「カチン!」という音が鳴り、空気銃は「パンッ!」と勢いよく空気が抜ける音がします。“もし”引き金を引いても音が鳴らなかった場合は、“まず”安全子(セーフティ)を確認してください。安全子がかかっていると引き金が引けなくなるので、これが原因である可能性が大です。
ぽんこつな模擬銃もあるので注意
安全子を動かしても引き金が引けない場合は、薬室がしっかりと閉鎖されているか確認しましょう。滅多にないことですが、模擬銃は「ぽんこつ」な場合が多いので、薬室がちゃんと閉まりきっていない場合があります。
それでも引き金が引けない場合は「もう一度はじめから行います」と告げて装填からやり直してください。減点はされますが一発不合格にはならないはずです。焦らなくても大丈夫なので、ひとつひとつ丁寧にこなしていきましょう。
『団体行動時の銃取扱い』試験
第一種の試験では団体行動をしているさいの銃の取り扱いの試験があります。この試験では、『隊列行動時の銃の保持操作』、『銃の受け渡し操作』、『休憩時の銃の取扱い』の3つの項目に分けて行われます。
隊列行動時の銃の保持・減点事項
まず、試験場に3~5人程度が呼び出されるので、横一列になって並びます。銃を受け取ったら試験官から「まわれ右」といった指示があるので、それに従って行動をしましょう。
この試験の“要”は『銃口が人に向かないこと』です。横一列状態から「まわれ右」をすると縦隊列になるので、そのさいに銃口が他人に向かないように銃を持ち換えてください。
減点事項
事項 | 減点数 |
---|---|
銃の保持ができなかった | 31 |
銃の保持が円滑ではなかった | 10 |
銃口を人に向けた | 10(毎) |
各操作を行うさいに、実包の有無、銃腔内の異物の有無を確認しなかった | 5(毎) |
用心鉄の中に指を入れた | 5(毎) |
減点事項は“いつもの”に加え『銃口を人に向けた』が最もみられるポイントです。
グループの「ダメな人」に引っ張られないように!
試験官から銃を受け取った(もしくは置かれている銃を手に取った)ら、試験官から開始の合図があります。試験が開始されたらすぐに薬室を開き「実包なし!異物なし!」をしましょう。
もしまわりがやらなくても“あなた”はやってください。この試験では「ダメな人」がグループに入ると、全員その人に引っ張られて「全員不合格」になることもままあります。
『横列』の銃の保持
銃の持ち方はよほど変でなければ大丈夫ですが、基本的には銃を脇に抱えて薬室を閉じ、銃口を下に向けます。反対の手は機関部や銃身に添えて銃を安定させましょう。
銃を胸にかかえて銃床に手を添える感じでも大丈夫です。
『縦列』の銃の保持
試験官から「まわれ右」の合図が合ったら、目の前・後ろにくる人に銃口が向かないように銃の持ち方を変えます。最後尾に来た人は銃を肩にかけ、銃口が後ろになるように構えてもかまいません。
この「まわれ右」を一周行ったら、続いて銃の受け渡しの試験が行われます。
渡河を想定した銃の受け渡し・減点事項
隊列行動の試験が終わったら、引き続き『銃の受け渡し』の試験が行われます。原則として銃は人に“持たせる”ことは禁止されていますが、川を渡るときや崖を登るときなど「どうしても必要」な場合に限り、銃を他人に持たせることが許されています。
減点事項
事項 | 減点数 |
---|---|
銃の受け渡しができなかった | 31 |
銃の受け渡しが円滑ではなかった | 10 |
銃の受け渡し方法が不適切だった | 5 |
銃口を人に向けた | 10(毎) |
各操作を行うさいに、実包の有無、銃腔内の異物の有無を確認しなかった | 5(毎) |
用心鉄の中に指を入れた | 5(毎) |
銃の受け渡しを行う方法
試験では2人1組になって立ち、地面に引かれた線を“川”に見立てて銃の受け渡しを行います。受け渡しをするさいは次の順番でおこなってください。
- 受け渡す側は薬室を開いて「実包なし!異物なし!」
- 自分は銃身を、相手には銃床を向けて手渡す
- 受け取る側は両手でしっかりと握る
- 受け取る側も薬室を開いて「実包なし!異物なし!」
- 受け渡した人が線(川)を超える
- 川を越えたら受け取った側の人は①~③と同じ要領で銃を返す
- 銃を受け取った人は「実包なし!異物なし!」
- 「おわりました」と試験官に告げる
休憩時の銃の取り扱い・減点事項
銃の受け渡しの項目が終わったら、最後に『休憩時』の銃の取り扱い方について試験が行われます。試験官から「休憩時の動作をしてください」といった発言があったら、薬室を開いて「実包なし!異物なし!」をし、銃を“地面”に置いて、自分も座り、「完了しました」と申告してください。
「休憩を終わってください」と告げられたら、立ち上がって銃を手に取ります。そして「実包なし!異物なし!」をしてから薬室を閉じ、「完了しました」と告げてください。
減点事項
事項 | 減点数 |
---|---|
休憩時の銃の取扱いができなかった | 31 |
休憩時の銃の取扱いが円滑ではなかった | 10 |
銃を置く動作が粗暴だった | 5 |
銃を不安定な場所に立てかけた | 5 |
薬室の開放あるいは弾倉の取り外しをしなかった | 5 |
銃口を人に向けた | 10(毎) |
各操作を行うさいに、実包の有無、銃腔内の異物の有無を確認しなかった | 5(毎) |
用心鉄の中に指を入れた | 5(毎) |
休憩時の銃の取扱いは、要するに「銃を持ったままにしないで、安定した場所に置きなさい」ということです。
また、銃を扱わないときは常に薬室を解放し、「この銃に弾は入っていませんよ」と“周囲にアピール”する必要があります。これは狩猟やクレー射撃などの現場でも大切なマナーなので、しっかりと身につけておきましょう。
違法わな・違法網の判別
わな猟・網猟の試験では、法定猟法(猟具)と違法品を判別する試験が行われます。試験はわな・網共通して、テーブルや地面の上に道具が並べてあります。これのひとつひとつについて、「これは猟具(OK)」、「これは違法(NG)」といったむねの発言で回答してください。
道具は手に取って調べても構いません。わからなければじっくりと観察して回答しましょう。
減点事項
事項 | 減点数 |
---|---|
判別を誤った | 5(毎) |
出題されやすい『法定猟法のわな』
- くくりわな(締め付け防止金具付き)
- 小型箱わな
- 筒式イタチ捕獲器(ストッパー付き)
- はこおとし(さん付き)
銃と同じように試験に出される猟具の種類は都道府県によって違います。しかし、上記のように出題される猟具はある程度決まっているので、それぞれの特徴をよく理解しておきましょう。
必ず出題される「くくりわな」、「はこわな」
「くくりわな」と「はこわな」は、試験に必ず出題されます。形状は都道府県ごとで違いがありますが、『長い金属ワイヤーの先が“輪”になっている』ものが「くくりわな」、『金属製の箱』みたいなものが「はこわな」と理解しておいてください。
天井が落ちて獲物を閉じ込める「はこおとし」
頻出する猟具に「はこおとし」があります。これは四角い箱の上が稼働式の天井になっており、箱の中に獲物が入ると天井が落ちて閉じ込めるタイプの罠です。「はこわな」と見間違いやすいですが、『天井が動く』点に注目してください。
出題されやすい『違法わな』
- とらばさみ
- くくりわな(締め付け防止金具が“無い”)
- 筒式イタチ捕獲器(ストッパーが“無い”)
- はこおとし(さんが“無い”)
「違法わな」として出題されやすいのは上のような道具です。
必ず出題される「とらばさみ」
罠の代名詞といえる「とらばさみ」ですが、罠にかかった動物の身体的損傷が激しいことから、平成18年に禁止猟法に指定されました。
「とらばさみ」といえば“ギザギザの刃”が印象的ですが、実際はギザギザしていません。中央にある丸い踏板の部分で判別しましょう。
筒式イタチ捕獲器の合法・違法はストッパーで見分ける
筒式イタチ捕獲器は法定猟法の「くくりわな」の1種で、試験にもよく出されます。しかし「同じ物」が二つ並べられている場合は、どちらかは“違法品”です。
筒式イタチ捕獲機の合法・違法の見分けるポイントは、内部にストッパーが付いているか否かです。ストッパーは金属のワッシャーが結び付けられており、これがあるタイプが合法。無いのが違法です。
くくりわなの違法品は『締付け防止金具』が無い
同じようなくくりわなが2つある場合、これのどちらかは違法品です。見分けるポイントは、ワイヤーが輪になっている部分(スネア)に『締付け防止金具』が付いて“いない”ことです。
締付け防止金具の形状は様々ですが、輪を引っ張って縮めてみたときに完全に輪が締まらないほうが合法品です。
はこおとしの中に「さん」がない
はこおとしが2つある場合は、片方に「さん」が付いていません。「さん」とは天井が落ちたときにひっかかるストッパーのことで、獲物が押しつぶされないような仕組みになっているほうが合法な猟具です。
出題されやすい『法定猟法の網』
- むそう網(片むそう網)
- つき網
- はり網(谷切あみ)
猟具として頻出される網は上の通りです。
むそう網
むそう網は左右に棒が付いた形状をしています。試験会場によっては畳まれた状態で置いていることもありますが、二つ並べて設置されている場合は地面に「固定されているか・否か」でチェックをしてください。固定されていると禁止猟法となります。
つき網
つき網は「でっかい虫取り網」みたいな形状をしています。似た網に違法品はないので、見分けるのは難しくないと思います。
なお、つき網によく似た猟具に「なげ網」がありますが、これは「つき網」の先端が外れる仕様になっています。漁業に使う“投網”とは違います。
はり網
猟具の「はり網」には2種類あり、木の間に網を張り“人が上下に操作して”鳥を捕まえる「谷切(やつきり)網」と、ウサギの走る地面に網をしかけておく「ウサギ網」があります。
間違いやすいのは、空中に網を“しかけっぱなし”にする網は禁止猟法となります。
出題されやすい『違法網』
- かすみ網
- とりもち
- 地面に固定された網
網の禁止猟法は上の物が頻出されます。
かすみ網
かすみ網は、むそう網よりも目の細かい網で作られた道具です。この網は鳥の目からは見えにくいため、飛んできた鳥をからめとって捕縛することができます。しかし飛んでいる鳥を“無作為”に捕縛してしまうことから、現在はかすみ網は違法猟法となっており、さらに“所持”することも禁止されています。
とりもち
とりもちは、網に粘着性の物質を塗っておき、鳥が網に触れると絡めとる網です。かすみ網と同じく無作為に野生鳥獣を捕縛してしまうため、現在では禁止猟法になっています。
試験には「とりもち」と書かれた箱が置いているだけだったりします。
地面に固定された網
先に述べましたが、網は“しかけっぱなし”にするタイプは「ウサギ網」を除いてすべて禁止猟法です。そのため同じ「むそう網」でも、地面に固定されているタイプは違法となるので、見分けるポイントにしましょう。
わな・網の架設
わなの判別が終わったら、試験官から「どれか1つを架設してください」と告げられます。猟具(合法の道具)を一つ手に取って、それを実際に架設してください。網の場合は「むそう網」の架設を行います。
減点事項
事項 | 減点数 |
---|---|
架設ができなかった | 31 |
架設が不完全だった | 20 |
架設が円滑でなかった | 10 |
架設の試験では、“できない”と即不合格になります。むそう網の場合は、金具の結び方などが不完全な場合は20点減点されます。
わなの架設方法
『はこわな』がオススメ
猟具のわなはいくつかありますが、一番やりやすいのは「はこわな」です。はこわなにもいくつか種類がありますが、多くの場合は「ハバハート式」と呼ばれるタイプが使用されています。
はこわなをテーブルの上に置いたら、まず扉から伸びている金属の棒を、指で「下」に押し下げます。すると左右の扉が開きます。
この状態で、底に設置されている踏板の金具に、金属棒を引っかけます。ちょっと難しいですが、バランスを見ながら操作してください。
金属棒から手を離して扉が開いた状態を維持できたら「できました」と試験官に告げましょう。
試験官から「わなを起動させてください」というむねの発言が出たら、備え付けていある細い棒で罠の踏板を押してください。すると、金属棒の噛み合いが外れて、扉が「ガチャン!」と閉まります。「わなを起動させました」と告げて試験終了です。
網の架設方法
『むそう網』を架設する
網の架設試験は「むそう網」一択です。「むそう網」は上記のような構造になっていますが、試験では「カラスデコイ」や「おとりスズメ」などは用いず、むそう網とテグス、金具の連結だけを行います。
ペグはあらかじめ設置してある
「むそう網」には、T字ペグ1本とU字ペグ2本を地面に打ち込んで使います。しかし試験会場は室内であることがほとんどなので、あらかじめ地面にペグが固定されている・・・はずです。このあたりは臨機応変に対応してください。
鳥獣判別試験
鳥獣判別の試験では、試験官から提示された絵や写真を見て、狩猟鳥獣であれば「動物の名前」を、非狩猟鳥獣であればそのむねを試験官に告げます。制限時間は1問につき5秒程度で、全16問でます。
減点事項
事項 | 減点数 |
---|---|
判別ができなかった | 2(毎) |
「狩猟鳥獣の名前が言えなかった」、「非狩猟鳥獣と判別できなかった」または「制限時間をオーバーした」場合に2点減点されます。
回答方法
回答の方法は都道府県によって違いがありますが、基本的には「これは何?」と問われ、それに対して「狩猟鳥獣の○○です」、または「非狩猟鳥獣です」と回答します。
提示される動物は『狩猟読本』の裏表紙に乗っているイラストであることが多いですが、実際の写真を使うところもあります。しかも「すっごく解像度の悪い写真」を出してくるところもあるそうです。
わからなければ「非狩猟鳥獣」と言ってしまう
もし、“どうしても”わからない場合は、すべて「非狩猟鳥獣」と答えましょう。「狩猟鳥獣」といってしまうと名前を答えないといけないし、無言でいると確実に2点減点になります。しかし「非狩猟鳥獣」といえば半分の確立で当たります。パニックになるぐらいなら「非狩猟鳥獣」と言ってしまったほうが得になります。
狩猟鳥獣一覧
令和4年度時点での狩猟鳥獣は下記表のとおりです。第一種の場合は獣・鳥、第二種と網は鳥、わなは獣が出題範囲です。
狩猟鳥獣一覧(令和4年度時点)
獣類 | 大型獣 | エゾヒグマ | |
ツキノワグマ | 多くの地域で捕獲禁止規制あり | ||
イノシシ | ブタとの混血種イノブタを含む | ||
ニホンジカ | 一部の地域・猟法で捕獲禁止規制 | ||
中型獣 | 中型獣 | タヌキ | |
キツネ | 一部の地域・期間で捕獲禁止規制あり | ||
テン | 対馬に生息する亜種ツシマテンを除く | ||
イタチ | メスを除く | ||
チョウセンイタチ | 令和4年度からメスが狩猟鳥獣に追加 長崎対馬市では捕獲禁止 |
||
ミンク | (特定外来生物) | ||
アナグマ | 一部地域・期間で捕獲禁止規制あり | ||
アライグマ | (特定外来生物) | ||
ハクビシン | |||
ヌートリア | (特定外来生物) | ||
ユキウサギ | |||
ノウサギ | |||
ノイヌ | 山野で自活するイヌ | ||
ノネコ | 山野で自活するネコ | ||
小型獣 | タイワンリス | (特定外来生物) | |
シマリス | 北海道に生息する亜種エゾシマリスを除く | ||
鳥類 | 水鳥 | マガモ | 一日の捕獲上限カモ類の合計5羽まで |
カルガモ | 一日の捕獲上限カモ類の合計5羽まで | ||
コガモ | 一日の捕獲上限カモ類の合計5羽まで | ||
ヨシガモ | 一日の捕獲上限カモ類の合計5羽まで | ||
ヒドリガモ | 一日の捕獲上限カモ類の合計5羽まで | ||
オナガガモ | 一日の捕獲上限カモ類の合計5羽まで | ||
ハシビロガモ | 一日の捕獲上限カモ類の合計5羽まで | ||
ホシハジロ | 一日の捕獲上限カモ類の合計5羽まで | ||
キンクロハジロ | 一日の捕獲上限カモ類の合計5羽まで | ||
スズガモ | 一日の捕獲上限カモ類の合計5羽まで | ||
クロガモ | 一日の捕獲上限カモ類の合計5羽まで | ||
カワウ | |||
大鳥 | ヤマドリ | 放鳥獣猟区以外ではメスを除く 一部の地域で捕獲禁止期間あり 一日の捕獲上限キジとの合計2羽まで |
|
キジ | 放鳥獣猟区以外ではメスを除く 一部の地域で捕獲禁止期間あり 一日の捕獲上限ヤマドリと合計2羽まで |
||
コジュケイ | 一日の捕獲上限5羽まで | ||
中鳥 | ミヤマガラス | ||
ハシボソガラス | |||
ハシブトガラス | |||
陸小鳥 | ヤマシギ | 一日の捕獲上限タシギとの合計5羽まで, 奄美地域で捕獲禁止規制 |
|
タシギ | 一日の捕獲上限ヤマシギとの合計5羽まで | ||
キジバト | 一日の捕獲上限10羽まで | ||
ヒヨドリ | 一部の地域で捕獲禁止規制あり | ||
ムクドリ | |||
スズメ | |||
ニュウナイスズメ |
狩猟鳥獣は最新版をチェック
注意点として、令和4年に「バン」と「ゴイサギ」が狩猟鳥から外されています。令和4年以前の本には、これらが狩猟鳥として書かれているので注意してください。
また、もっと古い書籍には「ムササビ」と「リス」の2種類の獣、「コオリガモ」、「ウミアイサ」、「カワアイサ」、「ビロウドキンクロ」、「オオバン」、「ウズラ」の6種の鳥が狩猟鳥獣に上がっていたりするので注意してください。
合格発表
すべての試験が終わると解散になります。試験結果は“まれに”当日発表されるところもありますが、ほとんどは後日発表になります。
発表方法はWebだったり、張り出しだったり
試験結果の告知方法は都道府県によって違いがあり、「1週間後にWeb上で公開」だったり「農林事務局の掲示板に張り出します」だったり「結果を郵送します」だったり様々です。
合格者の家に狩猟免状が郵送される
試験に合格していたら、あなたの住所に狩猟免状が郵送されます。この免状は狩猟をする“手続き”に使用するので、大切に保管しておいてください。
なお、猟友会経由で申請をした人は、支部猟友会に狩猟免状が送付されるはずです。
まとめ
- 狩猟免許の実技試験は“減点方式”。細かいミスを重ねないことが重要
- 銃の試験では『人に向けない』、『引き金・用心鉄に指をいれない』、「実包なし!異物なし!」で大量失点は防げる
- わな・網の判別は、時間をかけていいのでジックリ手に取って考える。2つ同じ物があれば、片方は違法品
- 鳥獣判別は、どうしてもわからなければ「非狩猟鳥獣」といえば、失点は最小限になる