【クレー射撃実践編その3】ダブル・トリプル・アメリカン『変則トラップ競技』を楽しもう!(おまけ『ラビット競技』について)

 クレー射撃で最も人気のあるトラップ競技には、一般的なオリンピックルール・ジャパンルールの他にも、様々な変則ルールがあります。今回はそれらの中から、国内で楽しむことができるダブルトラップ、トリプルトラップ、アメリカントラップの3種、また、トラップではありませんがラビット競技について簡単に解説します。
 なお、トラップ競技のオリンピックルール・ジャパンルールについては、別の記事にまとめていますので併せてご参考ください。

目次

ダブルトラップ

 ダブルトラップは、オリンピックの正式種目としても採用されているクレー射撃競技の一種です。一般的なルールに比べて難易度が高く、高い射撃の技術を求められますが、そのため実践的な狩猟の練習としても人気があります。

ダブルトラップの射場

 ダブルトラップは一般のトラップ射場で行います。射手は1から5番射座に並んで立ち射撃を行い、射撃が終わると右隣の射座(5番射座の次は1番射座)に移動をしていきます。
 ここまではオリンピックルールと同じですが、ダブルトラップではクレーが『3番射座の放出機からのみ放出される』という大きな違いがあります。この違いから放出されたクレーは〝射座ごとに角度が違って見える〟という違いが生じます。

クレーの放出され方(セット)

 ダブルトラップのクレー放出機は、速度80km/h、角度は正面(M)が0°、右方(R)が5°、左方(L)が−5°に固定されており、コールをすると2枚のクレーがほぼ同時に放出されます。
 放出のされ方には決まりがあり、左方→正面の順番で放出される『Aセット』、正面→右方の順番で放出される『Bセット』、左方→右方の順番で放出される『Cセット』の3パターンがあります。

採点のルール

 ダブルトラップは1ラウンドに25回の射撃を行い、クレーを1枚撃破すると1点になります。1回のコールでは2枚のクレーが放出されるため、クレーの合計数は50枚となり、満射も50点になります。
 同時に2枚放出されるクレーは、どちらを先に撃っても問題ありません。ただし、1枚のクレーに2発撃つことは禁止されています。

ダブルトラップのコツ

 ダブルトラップでは射座によって〝正面に飛ぶクレー〟が異なります。例えば1番、2番射座の射手からは右方に出るクレーが正面に見えますが、4番、5番射座の射手からは左方に出るクレーが正面に見えます。
 そこでダブルトラップでは、〝正面に見えるクレーをいかに早く撃破するか〟が、最大のコツとされています。なぜなら、正面に飛ぶクレーを撃破するまでの時間が短いほど、残り左右どちらかに飛んでいくクレーを追う時間を長く取ることができるためです。よって射手には、コール後に一早く正面のクレーを撃破し、続けて左右どちらかに体をスイングさせて2枚目の撃破するという、難易度の高い身体操作が求められます。

トリプルトラップ

 トリプルトラップは、一度のコールで3枚のクレーが放出されます。そのため、2発しか装填できない上下二連式を使用することができず、必然的に3発装填できる手動式(ポンプ式やレバー式)や半自動式散弾銃を使用することになります。

トリプルトラップの射場

 トリプルトラップは一般のトラップ射場で行いますが、1番から5番までの射座とトラップピットの間は、5mと10mの2つの距離が設けられます。射手は1番から5番射座に立ち、全員が撃ち終わったら全員一斉に右射座(1→2→3→4→5→1)へ移動します。この流れは「ラウンド」と呼ばれており、1ゲームは4ラウンド行われます。

ラウンドの流れ

 各ラウンドでは、射座の距離とクレーが発射される位置が異なります。まず第1ラウンドは『5メートルフロント』で行われ、5m射座の位置から射座正面から放出されるクレーを撃破します。続く第2ラウンドは『10メートルフロント』で10m射座の位置から行い、第3ラウンドは『5mセンター』、第4ラウンドは『10mセンター』となります。この「センター」は「3番射台の放出機からのみクレーが放出される」ことを意味しています。

クレー放出の順番

クレーは常に右方⇒正面⇒左方の順番で放出され、クレーの速度や角度はダブルトラップと同様です。なお、発射タイミングはプーラーが手動で管理しているため、わずかに発射タイミングに誤差が生じることがあります。
 第1、第3ラウンドの「フロント」では各射台の放出角度は常に同じに見えます。しかし、第2、第4ラウンドの「センター」ではダブルトラップと同様に、各射台で正面に飛ぶクレーが変化するように見えます。

採点のルール

 先述した通り、トリプルトラップは4ラウンド制で行われます。1回の射撃でクレーが3枚放出されるため、5射座×3枚で1ラウンドにつき15枚。4ラウンド×15枚で総クレー枚数は60枚、つまり満射は60点となります

トリプルトラップは日本独特の〝パーティーゲーム〟

 トリプルトラップはこれまでのトラップ競技とは異なり、正式な大会は開催されていません。そのため、今回解説したルールも正式なものではありません。
 トリプルトラップは銃に3発の弾を装填できる『手動式・半自動式限定』という特殊性から、狩猟者の間で行われる特殊ルールです。射撃会を行っているのは、猟友会や銃砲店、また個人の狩猟サークルなどで、「点数を競う」というよりも「いかに素早く連射ができるか」というラピッドショットを楽しむ〝パーティーゲーム〟の様相が大きいようです。

アメリカントラップ

 アメリカントラップは、その名の通り、アメリカで非常に人気のあるクレー射撃競技です。アメリカでの人気の理由は「クレー放出機1台で行えるため、荒野などでも気軽に楽しめる」という点にあります。しかし、日本ではスポーツ射撃を射撃場以外で行うことが禁止されているため、この利便性はあまり生かされません。しかしながら、日本国内でもアメリカントラップができる射撃場は少数ながら存在し、通常のトラップよりもクレーの放出方向が〝ランダム〟であることから、よりゲーム性を求めるシューターの間で根強い人気があります。

アメリカントラップのルール

 アメリカントラップは、専用のアメリカントラップ射場で行います。射撃場には1台のトラップハウスがあり、そこから後方16ヤード(約14.6メートル)の距離に射座が放射状に配置されています。
 アメリカントラップで特徴的なのは、ハンディキャップルールがあることです。このルールでは、過去の成績に応じて最大10ヤードまで射座を後ろに移動させることができ、射手の間で射撃の力量差があっても楽しめる仕組みになっています。

クレーの放出方向

 アメリカントラップでは、専用のクレー放出機を使用します。この放出機は、左右に首を振ることができ、最小17°から最大27°の角度でクレーを放出します。射手はこのクレー放出機が見えないようになっているため、コールをするまでどの方向にクレーが飛んでいくかわかりません。そのため通常のルールよりもゲーム性が高くなっています。

ダウン・ザ・ライン

 アメリカントラップの採点には様々なルールがあり、その中で最も一般的なのが『ダウン・ザ・ライン』です。このルールでは、参加者は1日に100枚のクレーを撃ち、1枚につき2発まで発射することができます。点数は撃破までに要した射撃回数で決まり、初矢での撃破は3点、二の矢での撃破は2点、失中は0点となります。
 アメリカントラップはその他にも、ウォーブルトラップ、ダブルライズ、自動ボールトラップ(ABT)など、様々なバリエーションが存在します。

ラビット

 ラビットはトラップ競技とは異なり、コロコロと転がるクレーを撃破するクレー射撃競技です。トラップとはまるで別物のゲーム性ですが、国内でも何か所かでラビットを楽しむことができます。

ラビットのルール

 ラビットは専用のラビット射場、またはスキート射場の一部を利用して行います。射場の左右にはクレーを縦向きに転がす専用の放出機が設置されており、クレーはコンクリートやゴムで舗装された道を転がります。射手は1番から5番の射座に立ってコールをし、クレーがセンターポールを過ぎるまでの間に撃破をします。
 

採点のルール

 射手が射座に立ってコールをすると、まずは左側からクレーが放出されます。これを撃破後に続けてコールをすると右側からクレーが放出されます。この2回の射撃を終えると右隣の射座に移動し、これを10回繰り返します。つまりクレーの放出数は合計20枚となり、満射も20点となります。

ラビットクレーの放出のされ方

 ラビットクレーは転がりやすいように縁が強化されており、クレーの表面はオレンジ色、裏面は黒く塗装されています。
 クレーはおよそ時速20kmで転がりますが、地面に散らばっている破片に乗り上げて不規則に跳ねます。さらにクレーの放出口は目隠しの板があるため、クレーが現れるタイミングもランダムになります。

ラビットのコツ

 ラビットはクレーが破片を乗り上げてウサギのように跳ね回るため、ランダム性の大きな競技になります。そのため射手はクレーを直接狙うのではなく、地面に弾を反射させる跳弾をうまく利用することがコツとされています。
 なお、ラビットで使用する弾はスキートと同様に9号弾が用いられるようです。
 

まとめ

  1. クレー射撃にはトラップ・スキート以外にも、ダブルトラップやトリプルトラップなどがある
  2. 連射が求められるダブルトラップやトリプルトラップは、狩猟の練習にも最適
  3. アメリカントラップやラビットも、国内には何か所か射撃場がある

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この記事を書いた人

学生時代に空気銃競技をはじめ、20代でクレー射撃を始めました。狩猟はやっていません。火薬代が高騰しすぎていつも金欠。

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