以前お話した通り、箱罠には「ダウンタイム」があります。
獲物の不意をついて足元を拾う「くくり罠」であれば、全く同じ場所であっても、他所から来た個体が偶然かかることもよくあります。
対して、餌を使って獲物の警戒心を解きほぐしていく箱罠は、次の獲物の警戒心を解いていくための準備期間が必要になるのです。
ただし、このダウンタイムを短縮し、狙ったタイミングで捕獲へ繋げる手法は存在します。
まずは捕獲直後の現場処理。
止め刺しを終えた直後の箱罠内部から、地面の土をゴッソリと削り取り、新しい土への入れ替えを行います。
これは獲物が暴れた際に撒き散らされた糞尿や、止め刺し時の血の匂いを緩和するためです。
土を張り替えたら、そこへたっぷりと餌を投入します。
この段階では、なるべく遠くまで匂いが届く誘引性の高い餌を選ぶのが鉄則。
罠猟師の中には、米ぬかをベースに酒粕や焼酎を混ぜ込んで匂いを増す人も多くいます。
先日コメントでいただいた「米ぬかは炒った方がより香ばしい匂いが立つ」というアイデアも、ぜひ次回試してみたいところです。
この段階で重要なのは、「餌は撒くが、扉はロックしておく」という点です。
「どうせ餌を撒くなら最初からトリガーをセットしておけばいいじゃないか」と思われるかもしれません。しかし、箱罠の初期段階で真っ先に突っ込んでくるのは、ウリ坊やタヌキなどの「本命ではないターゲット」です。
箱罠でこうした目的外の獲物を捕まえていると、近くで見ている本命が罠の仕組みを学習し、二度と近寄らなくなってしまいます。
そのため、撒いた餌の減り具合やトレイルカメラの映像から、「本命が完全に餌を食い始めた」と確信できるまで、じっくりと耐えます。
福岡ハンターズキャンプで使用している箱罠は、木のつっかえ棒を弾くことで扉が落ちるトリガー構造です。
そのため、ダウンタイム中はダミーのつっかえ棒を何本か立てておき、獲物がこれを押し倒しても「何も恐ろしいことは起きない」と経験させます。
そして、勝負を仕掛ける「Xデー」に、ダミーの棒とトリガーをリンクさせるわけです。
くくり罠とは異なり、捕獲日を意図的に決めることができるのが箱罠の強みです。
先日のメンバーに「明日にはかかる」と豪語したのも、獲物がすでに棒を無警戒に蹴り飛ばしていることを確認していたからこそでした。
……まあ、もちろん「絶対」ではありません。
それまで完全に無警戒だった獲物が、トリガーを本仕掛けに切り替えた途端「パタリ」と罠に寄り付かなくなることもよくあります。
「なぜ気付かれた? どうして入らない?」と考えるのが、箱罠猟の妙。
くくり罠とは全く異なる、駆け引きが詰まった実に深い猟法だと思います。




