弓矢での止め刺しは「合法」か?――「黒ではないから白」というのは危険な考え方

読者の方からこんなメールをいただきました。
「弓矢を狩猟で使うのは違法ですが、わなの止め刺しは狩猟ではないので、弓矢を使っての止め刺しは『合法』です。これまでの本にこの事に触れてない理由はなんですか?」
ふ〜む、なるほど。
このご質問には、「弓矢うんぬん」という話以前に、日本で狩猟をする上で絶対に理解しておかなければならない、重要な視点が欠けています。
よい機会ですので、みなさんもぜひ理解しておいてください。

まず、鳥獣法において「弓矢を使った狩猟」は、禁止猟法にあたるので「違法」(黒)です。
一方で、わなにかかった獲物の止め刺しは狩猟行為ではないため、弓矢を止め刺しに使うのは鳥獣法違反ではありません(黒ではない)。
しかし、「黒ではない」からと言って、「白である」とは言えないのです。

日本の法律は、すべての事象に対して「これは白」「これは黒」と決めているわけではなく、その多くは「黒ではない」だけです。
そして、それが「黒か」「白か」の判断は、最終的に裁判所で争われ、その結果は「判例」として積み重ねられていきます。
少なくとも私の知る限り、「わなの止め刺しに弓矢を使用した行為」が裁判で争われたことはありません。
したがって、読者様の「弓矢による止め刺しは合法」という言い分は間違いであり、正確には「違法ではないが、合法とは言えない」というのが法的に正しい判断なのです。

日本の法慣習では、公安委員会が「これは黒」と言ったら、それは問答無用で「黒」として潰しに来ます。
これの良い例が、北海道で起きた「ライフル銃取消問題」。
詳しい言及は避けますが、結局のところこの事件は、北海道公安委員会が「これは黒」と言い出したから、最高裁まで争うゴタゴタが始まったわけです。
逆に、公安委員会が「黒じゃない」と言うことは、客観的に「どう見ても黒」でも放置されます。
日本では賭博は違法ですが、パチンコ屋の横には必ず「特殊景品」を換金できるお店が立っています。
日本では売春は違法ですが、ソープランドでは浴場で偶然出会った男女が「自由恋愛」によってセックスします。
これは全国の公安委員会が「黒ではない」と言っているので「黒ではない」のです。

「そんな理不尽なことをしていいのか」と怒る方もいるかもしれませんが、これが日本のルールです。
そして、日本で狩猟をしたり、銃を持ったりするのであれば、これを否定せずに受け入れる事が大切です。
もし今回の質問者様のように、「弓矢で止め刺しをするのは合法」と思い込んで行動に移していたらどうなるか。
ある日突然、警察官から「取り調べ」の連絡を受けて、あれよあれよという間に「鳥獣法違反」や「動物愛護法違反」などの理屈を立てられて逮捕!立件!有罪!銃所持許可も狩猟免許もすべて取消し!……なんて事態が起こり得ます。
こんなことは起こらないと思う人も居ますが、日本の公安委員会は治安維持に係ること、特に銃を含めた「武器に関すること」はどえらい厳しいので、他のことよりもはるかにリスクが高いというのが私の感覚です。

まぁ、この話を抜きにしても「弓矢で止め刺しをする」というのは、実はあまり効果的ではなかったりします。
これまでの本に書いてこなかったのも、それが大きな理由。
この話はまた後日するとして、今回のお話で最も大切なのは「日本の法慣習」をちゃんと理解して行動することです。
「グレーだ」と理解した上での行動は、私は止めはしません。
しかし、「黒じゃないから白だ」という考えは、後々とんでもないことになりかねません。
上手いこと立ち回っていきましょう。

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