【体験レポート】インフルエンザの恐怖との戦い!?3泊4日の「メンターシップツアー」【カルガモ捕獲】

「メンターシップツアー」とは、福岡ハンターズ・キャンプが提供する、狩猟初心者のお客様へ「初めの1頭」を捕獲するまでを伴走するプランです。今回は2025年12月初頭に実施した、3泊4日の様子をダイジェストでお届けします。今回のゲストは、なんと遠路はるばる千葉県からお越しいただいたお客様。しかし、ツアー開始直前に予期せぬトラブルが襲いました……。

目次

ツアー中止!?インフルエンザとの激闘

ツアー開始の前日。 いそいそと翌日の狩猟ツアーの準備をしていると、4歳の娘の様子がどうもおかしい……。 顔を真っ赤にして鼻水を垂らしています。

「こ、これってもしかして……!?」

大急ぎで小児科を予約して受診させてみたところ、やはり診断は「インフルエンザA型」!!
や、やりやがった!! このタイミング!!

このとき大流行中のインフルエンザA型は、とにかく感染力が強い。
濃厚接触者である私も感染している可能性は大です。

「お金」の問題だけではない重い責任

もちろん発症すれば、狩猟ツアー料金を返還しなければならず、さらに3泊分の宿泊費も賠償しなければなりません。
しかし、問題は「お金」の面だけではありません。

最大の懸念は、今回のお客様がわざわざ千葉から飛行機でお越しになるということ。
お客様はこの日のために福岡県へ「狩猟税」を納めて狩猟者登録まで済ませています。
その負担と期待を考えると、まさに絶体絶命の大ピンチ!

意地のタミフル死守

「明日、私が発熱するわけには絶対にいかない!」

私はすぐさま別の病院を受診。
通常、発熱などの症状が無い場合は薬が処方されない場合もあります。
そこで必死に事情を話し、医者を説得して予防用のタミフルをゲット!!
その夜、凄まじい悪寒に襲われ「もう無理か!!」と諦めかけましたが、どうにかこうにか翌朝の出撃を迎えることができました。

猶予ナシ!「カモ猟」へ出撃

当会のメンターシップツアーでは、通常、初日は座学から入ります。
狩猟の安全と現場で必要なテクニックを、まずは知識として身につけていただくためです。

しかし、今回ばかりは状況が違います。
「私がいつインフルを発症し、ツアーが中止になるかわからない!」
まさに時間との戦い。
福岡空港へお迎えにあがったその足で、座学は抜きにしてカモの猟場へ直行しました。
基礎知識は、移動の車内と実戦の猟場で叩き込む。
超・実践型のスタートです。

猟場選定の至難

福岡空港から古賀市への道中、主要な猟場を回りますが、どこにもカモがいません……。
この日は12月とは思えないほどの高気温。
さらに、真冬にもかかわらず「南風」が吹いていました。

通常、福岡県北部の冬は強い北風が吹き、それによって日本海側にいるカモたちが内陸へと寄ってきます。
しかしこの日のコンディションは最悪。
「うぬぬ……なんとしても1日目に初捕獲を味わってほしい」

焦る気持ちを抑え、私たちはハンターズ・キャンプの間で通称「童貞殺し」と呼ばれる池へ向かいました。
ここは数々の初心者ハンターに初獲物の恵みを授けてきた、まさに女神のような場所です。

しかし、女神の池に到着した直後。
後ろからやってきた作業車に「じろり」と睨まれてしまいました。
もちろん、そこは狩猟禁止区域ではありません。
正当な活動ですが、こういう時に無用な摩擦を起こさないのもハンターの大切な資法。
トラブルを回避するため、断腸の思いで撤退。
結局、1日目は発砲の機会すら得られないまま、2日目の「賭け」にすべてを託すことになりました。

ハシビロガモとカルガモを捕獲!

迎えた2日目。
幸い発熱こそなかったものの、ひどい咳と倦怠感が襲います。
「今日が山場だ」と自分に言い聞かせ、前日の読み通りに福岡北部の沿岸地帯を攻めました。

そして、ついにその時が来ます。 最初に向かった池で、お客様が見事「ハシビロガモ」をゲット!
その後、大雨の予報が迫る中、日の出からのわずか3時間という短いチャンスをものにし、「カルガモ」の捕獲にも成功しました!

獲物を仕留めた直後、予報通り激しい雨が降り始めました。
近くの公園の東屋を借りて、そのまま解体講習へ。

自分たちが獲ったばかりの「初獲物」を前に、お客様は大興奮!
私は、喜びとインフルの倦怠感が混ざり合い、頭がクラクラするのを必死にこらえながら、命を肉に変える作法を伝えていきました。

冷たい雨の音と、温かい肉の感触。
それは間違いなく、千葉からお越しいただいたお客様にとって、忘れられない「狩猟の原体験」となったはずです。

アナグマとスパイスの格闘

ツアー中の楽しみといえば、当会ならではのフィールドランチ。
今回は「アナグマとイノシシの焼うどん」を提供しました。

「アナグマ」と聞くと驚かれる方も多いですが、その脂身は非常に甘く、優秀な調理油になります。
脂肪の少ないイノシシの赤身肉(モモや肩)と合わせることで、追加の油を一切使わずに、旨味の凝縮された焼うどんが完成します。

スパイス調合の深みと反省

今回の料理で味の決め手になるのは「コリアンダーシード」。
ホールの状態から潰して使うことで、加熱後にまろやかな香りに変化し、ジビエの野性味を引き立てます。

しかし、今回は「時短」のためにうどんを使用したことで、普段のライス用の調合ではレッドペッパーの辛味とクローブの苦味が強く出すぎてしまうという結果に。
「食材の変化に合わせた微調整」の重要性を、料理を通して改めて痛感する時間となりました。

3日目:忍び猟で遭遇したイノシシの親子

最終日は山に入り、大物を狙う「忍び猟」です。
相変わらず咳がひどく体調も万全ではありますが、気合を入れて出猟!
日の出直前に現場へ到着し、お客様へ「忍び猟は『音』に注意しなければなりません。絶対に無用な音を出さないように!」と注意した矢先…
猟場の奥(林道はドン付き)から「ゴトゴト」とトラックがやってくるではないか!!
日の出前の山奥に、いったい何の用事があって来ていたのか!?
その真相は定かではありませんが、完全に出鼻をくじかれました。

イノシシを発見し、発砲するが!?

半ば諦めかけていましたが、とにもかくにも忍び猟の実習を開始。
林道のドン付きから徒歩で山に入り、息を殺して周囲を伺っていると‥‥
「来たッ!」岸の山を渡るイノシシの親子を捉えました。

「慎重に!引きつけて!」 無線で指示を出し、お客様と一緒に発砲!
一瞬、群れの中央にいた個体が「ぐらり」と姿勢を崩したように見えましたが‥‥追跡むなしく捕獲には至らず。
群れは山の奥へと消えていきました。

獲物以上の収穫

3泊4日の全日程が終了。
最終的に大物の捕獲は叶いませんでしたが、お客様からは「実際に獲物に向けて発砲できた経験が何よりの収穫でした。」という、この上ないお言葉をいただきました。

狩猟は、教科書通りにはいきません。
家族の病気、天候、獲物の動き、そして料理の味付けまで。
その時々の変化に対応し、修行を積み重ねていくプロセスそのものに、狩猟の真の魅力があるのだと再確認した4日間でした。

千葉からお越しいただいたゲスト様、本当にお疲れ様でした!

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