猟期が近づいてくると、なんだか「遠足前」のようなウキウキした気分になってきますよね♪しかし!狩猟では“ちょっと”した違反で狩猟免許や銃所持許可が取消しになったり、「罰金刑!懲役刑!」といった重い罪に問われたりする危険性があります。そこで今回は出猟前に必ずチェックして欲しい「狩猟で起こる違反」についてまとめました。
銃刀法に関する違反行為
銃猟では、特に銃刀法に関する違反に注意しましょう。ベテランの中には、銃の扱いに関してかなり“適当”な人も多いので、そのような人たちのマネをしないように知識を身に着けておいてください。
『裸銃で持ち歩く』は違法
銃は狩猟やクレー射撃などで“使用中以外”は、常に覆いを被せて人目に付かないようにしなければなりません(銃刀法第十条4項)。この理由は、「銃」という存在が人に対して恐怖心を与えるためです。
車で運搬するときも銃はケースに入れる
“使用中以外”というのは、例えば猟場に移動中だったり射撃場に向かう途中の状態です。例えトランク内だったとしても、銃は容器(ガンケースやガンカバー)に入れなければなりません。
車から降りて猟場までの移動するときは、布製のソフトガンカバーをかけて持ち運びましょう。
銃を取り出していいのは猟場のポイントについてから
銃の覆いを外して良いのは、例えばグループ猟で自分の持ち場に付いたときや、クレー射撃場の射面(射手が待機するスペース)に入ったとき、修理などで銃砲店にいくときは銃砲店に入ったときになります。
「狩猟中だから」と銃を剥き出しにした状態で道路を歩いていると違法になるので注意しましょう。
『不適切な装填』は違法
銃へ弾(実包やペレット)を込める装填行為は、猟場内では『足場が確定したとき』、射撃場では『射台に入って射撃の順番がまわってきたとき』のみ可能となります。そのため、移動中や保管中に弾を装填していると安全措置義務違反として銃刀法違反になります。
セーフティは「弾がでなくなる」わけではない!
しばしば「安全子(セーフティ)をかけていれば大丈夫」と思っている人がいますが、セーフティは「引き金が引けなくなる」だけで「弾が出なくなる」わけではありません。転んで銃をぶつけたりすると、引き金を引いていないのに弾が発射される暴発を起こす危険性があるので、絶対に違法装填をしてはいけません。
『他人へ銃を携帯させる』は違法
あなたが所持している銃を“他人に持たせる(携帯させる)”行為は銃刀法違反になります。これは持たせた側・持った側両方が罪に問われるので、特に注意しましょう。
相乗りしている場合も銃は自分で管理
車で猟友と移動中に、相方を車に置いて車外に出るような行為も「銃の管理を他人に預けた」として違反となるケースがあります。銃は必ず自分で管理してください。
緊急時・渡河時の例外
例えば、崖から落ちそうになったときや、河を渡るために安全上「銃を相方に渡した方が良い」と判断される場合は、他人に自分の銃を携帯させることができる“例外”が認められています。
『許可を受けた区分以外での発砲』は違法
猟銃・空気銃所持許可証の『用途』の欄には、「狩猟」、「標的射撃」、「有害鳥獣駆除」のいずれか(もしくは複数)の記載があり、銃はその用途以外で、携帯、発砲すると違法になります。
野外での“空き缶撃ち”は違法行為
海外には空き缶やスイカなどを銃で撃つプリンキングという遊びがよく行われています。しかし猟銃・空気銃所持許可制度には「遊ぶため」という用途はありません。そのため日本ではプリンキングをすると違反になります。
狩猟目的でも“試し撃ち”は違反行為
スコープ調整などで野外で“試し撃ち”をする行為も違反になります。これは「狩猟」の用途で発砲ができるのは「狩猟鳥獣」に対してだけなので、例え狩猟目的であっても狩猟鳥獣以外に発砲をするのは違反となります。
「標的射撃」の意味は「国が認めた射撃場での射撃」
用途の「標的射撃」は、国が射撃場と認めた場所でクレー射撃場や静的射撃場での射撃を意味します。よって、野外での空き缶やスイカなどは「標的」としてみなされないので注意してください。
『人家密集地などでの発砲』は違法
狩猟・有害鳥獣駆除という許可された用途内であっても、鳥獣保護区・休猟区、銃禁エリアなどで発砲をすると発射制限違反という違法になります。
発砲が禁止されているエリア
発砲が禁止されている区域には、上記の鳥獣保護区・休猟区、銃禁エリア以外にも、以下のような場所が該当します。
- 人家が密集している場所
- 寺社境内や墓地など荘厳性が重視される場所(※狩猟自体が禁止されているため)
- 道路上や区域が明示された都市公園など(※狩猟自体が禁止されているため)
人家密集地の定義とは?
狩猟者のあいだでしばしば議論に登る「人家の密集地」の解釈ですが、これは法律上に具体的な基準があるわけではありません。
しかし、平成12年に『半径200m以内に家が10軒あった』ことで有罪となった“最高裁判例”があるため、現在ではこれが基準になっています。
注意点としてこれは判例なので、今後どのような場所が「人家の密集地」と見なされるかはわかりません。要は「ヤバそうな場所で銃を撃つな」と覚えておいてください。
立ち位置でも『発砲禁止』の場所は違う
法律では「道路上での狩猟行為は禁止」とされていますが、銃猟の場合は獲物との距離が離れているため、判断があいまいになります。
結論だけ書くと「道路上からの発砲」および「発射した弾が道路を超えるような発砲」はNGです。ちなみに、道路の法面(のりめん:斜面)も「道路」とみなされるので注意しましょう。
『発砲禁止時間での発砲』は違法
狩猟用途では「発砲できる時間帯」も決まっています。その時間帯とは「日の入りから日の出まで」とされており、“日の入り”と“日の出”の基準は国立天文台から発表される時間です。
都道府県で「日の出・日の入り」の時間は微妙に違うので注意
県境の大きな川(埼玉県と茨城県の利根川のような場所)で、とあるハンターが「銃声がしたから日の出の時間だな」と思って発砲したところ、それは日の出時間が数分早い“対岸からの銃声”で、その人は見張っていた警察官によって捕まった!…なんて実話があります。
日の出・日の入りの時間は都道府県によって数分違いがあるので、必ず自分の目でチェックをしましょう!
射撃場では日の入り後でも撃てる
ちょっと細かな話ですが、法律上は「日の入り後・日の出前に発砲をしてはいけない」ではなく、「“銃猟”をしてはいけない」という決まりになっています。よって、射撃場では日没後でもクレー射撃や静的射撃を行うことができます。昔は「ナイタークレー射撃場」ってあったらしいんですが、今はあるんでしょうかね?
余談になりますが、都道府県が公共事業として鳥獣の捕獲許可を出す『特定鳥獣保護管理計画制度』は、狩猟の『狩猟制度』とはきまりが違うため、夜間でも発砲はできます。ただし、夜間発砲の許可が下りるのは、かな~り厳しい審査があります。
所持許可証の不携帯・銃の用途外携帯
銃を携帯するときは、必ず猟銃・空気銃所持許可証を忘れないようにしてください。運転免許証の不携帯は3,000円の反則金(前科の付かない軽い罪)ですが、許可証の不携帯は20万円以下の“罰金”というシャレにならないぐらい重い罪になります!
用途外で携帯していると違反
例え所持許可証を携帯していても、それが“用途外”である場合は違法な携帯として罰せられます。例えば、「猟期でもないのに銃を持ってウロウロしていた」とか、「友達の家に銃を見せに行くために銃を持っていた」とか、「クレー射撃の帰りにネカフェに寄り道していた」など、判断基準は様々ですが、このような場合は違反とみなされる可能性があります。
なお、「銃の修理のために銃砲店まで銃を運んでいた」や「狩猟やクレー射撃の帰りが遅くなったので宿泊した」といったケースは違反とはみなされません。
宿泊地での銃の管理
狩猟や標的射撃などで遠征をする場合、宿泊場所に銃を持ち込まなければなりません。このときの管理については法律上明記されてはおらず、公安委員会からも「盗難に注意して、自分でしっかりと管理しましょう」という見解しかでていません(※平成31年通達)。この見解の要旨は以下の通りです。
- 宿泊場所に銃の保管設備が無い場合は、銃をガンロッカーに入れて保管しなくても大丈夫(法第10条の4第2項の規定)
- ただし、宿泊場所で銃を保管する場合は、施錠したケースに入れて押し入れなどの目立たない場所に毛布を被せたりして見えないようにすること
- 先台やボルトなどの部品を取り外して、例えば貴重品を入れる金庫などに入れておくこと
- 車のトランクに銃を入れっぱなしにするのは「保管」とは言えない!
人に「銃を持ってます」なんて言わないで!
宿泊場所の人に「銃を持ち込むことを言うべきか・言わないべきか」という疑問については『言わない方がいい』といえます。
なぜなら、「銃を持ってます」なんていうと“確実に”嫌がられるし、万が一別の人に聞かれていた場合に盗難のリスクが上がります。同じ理由で、休憩などで入るお店の人に「銃を持っているんですが、入っていいですか?」なんて聞かないようにしましょう。
保管義務違反
狩猟や標的射撃から帰ったあとは、銃を適切に分解(テイクダウン)してガンロッカーに保管しましょう。
銃を玄関に置きっぱなしにしたりするのは当たり前に違反ですが、ガンロッカーのカギを放置したり、他人に預けたりする行為も違反になります。
他人にカギを預けていてもだめ
ある男性ハンターがガンロッカーの設置検査(更新時の自宅訪問)を受けたさい、警察官の前で「お~い、母さん。ガンロッカーのカギってどこに置いたかな?」と聞き、“その場で”保管義務違反として検挙されたケースがあります。
このように、普段適当に銃を保管していると、こういったタイミングで「ボロ」が出ます。ガンロッカーの鍵は普段から自分で管理しましょう。
刃物に関する違法行為
銃刀法では「刃渡り6㎝以上」ある刃物を携帯していると銃刀法違反となります。ただし、この決まりには「業務その他正当な理由による場合を除いて」という記述があり、これにより狩猟では刃渡り6㎝を超えるナイフ類を携帯していても違反とはみなされません。
“狩猟中”以外のナイフの携帯は違反
注意が必要なのは狩猟中“以外”のナイフの携帯についてです。例えば狩猟中、あなたが昼食を買いにコンビニに入ったとき、腰にナイフをさしたままにしていると違反とみなされます。
同じ理由で、狩猟が終わったあとにナイフを車のトランクに積みっぱなしにしていた場合も違反と見なされる可能性があります。
刃渡り6㎝に満たない場合でも違反になる
銃刀法に引っかからない「刃渡り6㎝未満の刃物」であっても、何の理由もなく携帯していると軽犯罪法違反に触れます。
マルチツールナイフやポケットスキナーのような小型ナイフはポケットに入れっぱなしになるので、狩猟から帰ったら装備を全部点検してから収納しましょう。
鳥獣保護管理法に関する違反行為
狩猟では銃刀法に加え、鳥獣保護管理法に関する違反にも十分注意しましょう。
『非狩猟鳥獣への狩猟行為』は違法
禁猟区での狩猟鳥獣の捕獲行為や、狩猟鳥獣ではない鳥獣の捕獲行為は、鳥獣保護管理法違反となります。罰則も「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」という厳しいので注意しましょう。
弾が当たらなくても“違反”
この違反で理解しておかなければならないことが、非狩猟鳥獣を「捕獲したら違反」ではなく「捕獲行為が違反」であることです。つまり、実際に弾が当たらなくても、非狩猟鳥獣に“発砲”すると違反と見なされます。特にカモ猟では、狩猟鳥獣のカモと非狩猟鳥獣のカモが入り混じっていることがあるので、しっかりと“鳥獣判別”の目を養ってください。
同様な理由で、禁止猟法の弓矢などを持って野外をウロウロしていても「捕獲行為」とみなされて違反となるケースがあります。
狩猟者登録証の不携帯・狩猟者紀章の非装着
狩猟中は、その都道府県から貰った狩猟者登録証を携帯し、狩猟者紀章(ハンターバッヂ)を人から見える位置に装着しましょう。これを忘れると30万円以下の罰金になります。
銃猟では狩猟者登録証と合わせて所持許可証も携帯しておかなければなりません。なので、所持許可証と狩猟者登録証はセットで防水ケースに入れ、ジップロックに包んジッパー付きの内ポケットに入れておきましょう。
狩猟免状は持ち歩かなくてもOK
しばしば勘違いされていますが、狩猟免許試験で発行された狩猟免状は携帯する必要はありません。免状はデカいし邪魔なので、自宅か猟友会で保管・管理しておきましょう。
銃猟に関する『禁止・危険猟法』
運行中の車両からの狩猟行為は違法
銃猟の場合、運行中の自動車、5ノット以上で航行中のモーターボート、運行中の飛行機から狩猟をするのは禁止猟法になっています。
「運行中」という言葉から「じゃあ、車を停めた状態で中から射撃するのはいいのでは?」と思われがちですが、法律上『車庫から出た車』は『運行中』という扱いになるため、このような行為はNGです。
猟犬にとどめを刺させる猟法も禁止猟法
猟犬を使役した狩猟では、しばしば猟犬たちが獲物を噛み止めすることがあります。これ自体は問題ないのですが、例えば“銃を持たずに”猟犬だけを使役する狩猟行為は違反となります。
その他、銃猟に関連する禁止・危険猟法
危険・禁止猟法には色々な種類がありますが、主に銃猟に関係するのは以下の通りです。なお、「口径の長さが10番を超える銃」や「構造の一部として3発以上を装填できる散弾銃」なども禁止猟法に定義されていますが、こういった規制された銃は「そもそも所持できない」ため、説明から割愛しています。
- 爆発物、劇薬、毒薬、おとしあな、その他危険と判断される道具を併用した猟法
- 据銃(トリガーに獲物が引っかかると自動的に発砲する罠)の使用
- ヤマドリおよびキジの捕獲等をするためテープレコーダーなどを使用する猟法
- キジ笛を使用する猟法
- 吹き矢、弓矢、クロスボウ、釣り針、とりもちを併用した猟法
わな・網猟に関する『禁止・危険猟法』
締付け防止金具を使用していないくくりわな
くくりわなのスネア(輪の部分)には、締付け防止金具と呼ばれるストッパーを付けておく必要があります。
これは、罠の動力(例えばバネ)の力がかかり続けるのを防ぐための部品で、イノシシやシカのくくり罠(足くくり)にはワイヤストッパーと呼ばれる金具が用いられます。
イタチ捕獲器といったくくり罠には、ストッパーとして金属ワッシャが使われることがあります。
4mm未満のワイヤ・より戻し未着装は違反
イノシシ・シカ用のくくり罠で使うワイヤは、太さ4mm以上でなければなりません。罠猟品メーカーで購入するワイヤであれば大丈夫ですが、一般的な店では「4mm」というワイヤはまず売っていないので注意しましょう。
また、イノシシ・シカ用のくくり罠には、よりもどし(サルカン)という部品をスネアとリード(木に結び付ける方)の間に装着しなければなりません。これは、罠にかかったイノシシ・シカが暴れてワイヤが捩じれ切れないようにするためです。
スネアの直径は12㎝以下
すべてのくくり罠において、スネアの直径が12㎝を超えるサイズは違反になります。これはクマ(ツキノワグマ・ヒグマ)の錯誤捕獲を防止する目的があり、「12㎝」というサイズは一般的なクマの足のサイズ“以下”とされています。
なお、この規制はクマが生息していない都道府県では緩和されている場合があります。詳しくはその年度に都道府県から配られる狩猟者必携や、ホームページを確認してください。
固定された網は禁止猟法
網猟の法定猟法には「はり網」がありますが、これは“人が操作するタイプの網”であり、しかけっぱなし(地面に固定する)はり網は違法になります。
例外として、ノウサギ・ユキウサギを捕獲する目的で地面に設置する網は猟具として認められています。
その他、わな・網猟に関連する違法猟法
わな・網猟で危険・禁止猟法に抵触する可能性のある猟法は以下の通りです。
- 同時に31基以上のわなを使用する猟法
- 鳥類、ヒグマ、ツキノワグマをわなで捕獲する猟法
- おし、とらばさみ、つりばり、とりもち、矢を使用する猟法
- 爆発物や劇薬、毒薬、おとしあななど、人の生命または身体に重大な危害をおよぼすおそれのある罠
わな・網猟では禁止区域に獲物が出るような猟法は禁止
禁猟区では狩猟が禁止されていますが、例えば「くくり罠」にかかった獲物が道路(禁猟区)に飛び出すような“設置方法”は違反になります。くくり罠を設置するときはリードワイヤの長さをよく確認し、道路などに飛び出さないような場所・ワイヤの長さで設置するようにしましょう。
火薬類取締法
猟銃を使った狩猟では、火薬類の取扱いに関してもよく理解しておく必要があります。なお、猟銃用火薬類(実包や空包、銃用火薬、雷管の総称)は、所轄の公安委員会から猟銃用火薬類等譲受許可証を受けるか、狩猟者登録後に猟友会から無許可譲受票を貰うことで購入できるようになります。
火薬類の消費
狩猟の場合は1日に101発、標的射撃の場合は1日に401発以上の実包(空包含む)を消費する場合、公安委員会から猟銃用火薬類等消費許可を受けなければなりません。
まぁ、一般的な狩猟で1日に101発以上の弾を撃つことはまずないので、一応知識として持って覚えておいてください。クレー射撃を“ガチ”でする人は401発以上撃つこともあるので、消費許可を忘れずに受けてください。
狩猟用途で購入した弾は標的射撃に使えない
猟銃用火薬類等譲受許可証を『狩猟』の用途で取った場合、もしくは無許可譲受票で購入した火薬類は、原則として狩猟以外の用途で使用できません。同様の理由で、『標的射撃』で許可を受けて購入した火薬類は、狩猟用途では使用できません。
例えば「カモ用の3号弾」や「00(ダブルオー)バックショット」と呼ばれる実包は、クレー射撃や静的射撃(的撃ち)に使用できません。逆に、『標的射撃』の用途で購入した7.5号(トラップ用)、9号(スキート・ラビット用)実包は、狩猟に使用できません。
なお、狩猟用途で購入した「7.5号」と「9号」の実包はクレー射撃で。スラグ弾、サボット弾、ライフル弾の実包は静的射撃で使用できます。これは「狩猟の練習」という“名目”での消費になるためです。
火薬類の保管
実包と空包の合計800発、無煙火薬等5kg、雷管2000個までならば、自宅内に設置した装弾ロッカー内で保管できます。これ以上保管する場合は敷地内に火薬庫を設置する必要がありますが、一般的な狩猟ではこの上限を超えることはまずないと思います。
狩猟用途の保管期限は「次の猟期の終わりまで」
火薬類を「狩猟」の用途で購入した場合(無許可譲受も含む)は、原則として「次の猟期の終わりまで(要は2年以内)」なら合法的に保管できます。それを過ぎた場合は、銃砲火薬店などに廃棄依頼をしなければなりません。
標的射撃目的の保管期限は原則ない
「標的射撃」の用途で弾を購入した場合、法律上に保管期限は明記されていません。ただし、標的射撃は狩猟とは違い「いつ・何発消費する」ことが明確なので、あまり長く弾を保管していると「で、その弾はいつ消費するんです?」と公安委員会からツッコミを受けます。自宅での保管は最小限にとどめましょう。
有害鳥獣駆除の保管期限は原則3カ月
「有害鳥獣駆除」の用途で弾を購入した場合、狩猟とは違って保管期限に定めがありません。しかし平成18年に経済産業省から出された内規によると、「従事者証の有効期間から3か月以内に譲渡・破棄してね」とされています。
火薬類の保管
自宅に保管している猟銃用火薬類は、銃用雷管・猟銃用火薬管理帳簿(実包管理帳簿)を作成して管理しましょう。書き方のフォーマットは色々ありますが、猟友会に入会すると手帳と一緒に管理帳簿がもらえます。
実包の製造
火薬と銃用雷管を組み合わせて実包・空包を作ることは、本来であれば許可を受けた製造業者でしかおこなえません。
しかし、1日に100個以下であれば、個人の自宅でも弾を製造することが可能です。これをハンドローディング(手詰め)といいます。
実包の譲渡し・廃棄
使用しなかった火薬類は、銃砲火薬店(※銃砲店の中で火薬も扱っている店)などに持ち込んで、譲渡・破棄をしなければなりません。
破棄には1発数十円の処分料がかかるので「ゴミに捨てちゃお…」というダメハンターがいますが、過去にゴミ処理場で実包が見つかり“トンデモナイ”騒ぎになったことがあります。火薬類は絶対にゴミに捨ててはいけません。もちろん、自宅で燃やしたりしてもいけませんよ!
他の狩猟者へ渡すときは『譲渡許可』が必要
実包の廃棄について、しばしば「他人にあげちゃえばいいんじゃないの?」と思われている方がいます。確かに“譲受”許可証があれば相手が銃砲火薬店でなくても引き取ることはできます。しかし注意が必要なのは、その火薬類をあげる側には“譲渡”許可が必要になります。
なので、例えばグループ猟で「弾を撃ち尽くしちゃったの?じゃあ俺の使っていいよ」みたいな感じで他人に弾を手渡すと、例え相手が譲受証にあなたの名前を書いたとしても、あなたには譲渡許可がないため違反になってしまいます。
火薬類の輸送
火薬類を持って公共交通機関を使う場合、各交通機関の運行規定(鉄道運輸規定、旅客自動車運送事業運輸規定など)に定められた条件があります。これら規定は会社によっても違うので、あらかじめ確認をしておきましょう。
交通機関 | 制限 |
---|---|
列車 | 実包と空包の合計200個以内 無煙火薬類等の合計1㎏以内(容器等を含む) 銃用雷管400個以内 |
バス | 実包と空包の合計50個以内 |
船舶 | 実包と空包の合計200個以内 銃用装弾400個以内 無煙火薬類等の合計1㎏まで |
飛行機 | 猟銃用火薬類5kg以内(手荷物不可) それ以上の場合は別に規制あり |
郵便 | 郵便による火薬類の輸送は全面禁止 |
弾と銃を一緒に入れてはダメ
火薬類を運送するときは、専用のジェラルミンケースや鍵付きのアンモボックスなどに入れておきましょう。「スーツケースの中に服と一緒に入れる」といった梱包は避けてください。
また、銃を入れているガンケースやガンカバーのポケットに入れて持ち運ぶのも、盗難のリスクを考えると避けるべきです。
輸送に関する内規
船舶で銃や火薬を移動させる場合は、船長への許可が必要になります。その会社によっては「銃を船内預りにするように」といった指示があるため、それに従ってください。
飛行機で輸送(受託手荷物)する場合も、会社によって対応が変わります。航空会社によっては専用の銃ケースを用意してくれたりしますが、LCCなどでは「鍵付きのケースでないと受付できない」といった場合もあります。事前に確認をしておきましょう。
その他の注意事項
狩猟では、上記『法律違反』だけでなく、大小さまざまな“ルール”が存在します。それを一つ一つ解説していくとキリがないので、以下ザックリと要点だけ述べていきます。
地元民とのトラブルは、狩猟者側が“折れる”
狩猟では地元の人たちとの出会いがありますが、“必ずしも”その出会いは良いことばかりではなく、しばしばトラブルに発展することもあります。
こういったトラブルに合った場合は、自分から折れてください。狩猟は“遊び”です。遊びでイライラしたり、嫌な目に合うのは逆に不幸なことだと思いませんか?
「チクショウ!何様のつもりだ!」とイライラする気持ちはよくわかりますが、その土地には、よそ者の狩猟者より地元の人たちのほうが大事です。ここは気持ちを切り替えて行動しましょう。
狩猟者同士のトラブルは“逃げる”
狩猟では狩猟者同士のトラブル(特にナワバリ問題)も起こります。こういったトラブルも、こちら側からさっさと手を引きましょう。
狩猟者同士のトラブルで厄介なのは、警察に「嘘の通報」をされることです。警察も通報を受けたら出動しなければならないので、例えあなたが何の違反を犯していなくても、長時間の拘束を受けることになります。
まぁ、狩猟業界に限らず“変なヤツ”は必ず存在します。そういった人間とのトラブルを避けるためにも、逃げまくってください・・・いや、「逃げ」ではなく「転進」といったほうがいいですね。
不文法で困ったら「問題をおおやけにしないこと」を優先させる
狩猟の世界には様々な不文法(文章として明記さえていない法律)があります。これについて合法か非合法かをハッキリさせたがる人がいますが、そういった「ヤブヘビ」は止めましょう。
不文法のデメリットは「お上がダメと思ったことはすぐに違法にできる」ことですが、逆にいうと、お上が「どうでもいい」と思ったことは“おめこぼし”してもらえるということです。
現在狩猟業界は「野生鳥獣被害の激増」という順風を受けて“錦の御旗”の側にいます。そのため、銃を管轄する公安委員会も「まぁ、うまいことやってくれ」という態度でいてくれています。
つまり、私たち狩猟者が心得ておくべきことは「物事を白黒はっきりさせること」ではなく『お上へ“問題ごと”を持ち込まないこと』です。
日本で狩猟をするのなら『日本のスタイル』を飲み込んで考える
この話を聞いて「いや、それでも白黒ハッキリさせないと気が済まない」という方は、ハッキリ言って日本で狩猟をしないほうがよいです。
狩猟という文化は、どの国でもどの時代でも時の権力者によってコントロールされてきました。その中で日本はかなり“自由”に庶民が狩猟を楽しめる文化になっており、その流れは今も続いています。よって、これからも自由な狩猟文化を維持していくためには、すべてを成文法でガチガチに固めるよりも、不文法で「ゆるゆる」やっていくほうがよいのです。
「日本の自由な狩猟文化」という大きな遺産を後世に残していくためにも、今の私たちは狩猟の問題に対して「うまいことなんとかする」という知恵と工夫を持って乗りこえましょう。
まとめ
- 銃猟では銃刀法・火薬類取締法に特に注意する
- 鳥獣保護管理法違反にならないように、禁猟区や猟具の取扱いに注意する
- 狩猟には不文法なことが多いが、それを飲み込んで「うまくやる」ことが重要