『猟友会』はもう不要?組織の現状と存在意義を考えてみた

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 狩猟者ならば誰もが一度は耳にする猟友会。しかし、時代の変化とともに「猟友会は本当に必要なのか?」という疑問を持つ人もいます。この記事では、猟友会の歴史、組織構造、現状の課題、そして未来への提言について考察します。

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  1. 『支部猟友会』は、狩猟者登録手続きのデジタル推進が必要。組織の必要性よりも、そもそも存続できるのかが疑問
  2. 『都道府県猟友会』は、行政との情報共有で必要な組織。だが、地域差でサービスの質にバラつきが大きい
  3. 『大日本猟友会』は、政府への圧力団体として必要な組織。しかし、現状は〝迷走〟が目立つ
  4. 猟友会員はしっかりと声を上げて改革を進めるべき

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目次

『猟友会』とは?その歴史と組織構造

 猟友会は、1910年に帝国在郷軍人会という陸軍の外郭団体が、軍への毛皮を安定供給するために地元の狩猟者を取りまとめたことに始まります。その後、大日本聯合獵友會が設立され、戦後は大日本猟友会と名称を変え、狩猟者の道徳心向上や狩猟の適正化を目標に活動しています。

三層構造と会員制度

 現在の猟友会は、大日本猟友会都道府県猟友会支部猟友会の三層構造になっています。会員は、支部猟友会へ年会費を支払うことで、自動的に上位組織にも所属することになります。
 年会費は、都道府県猟友会と支部猟友会の会費が地域によって異なりますが、合計で15,000円から20,000円程度になります。

「猟隊」と「猟友会」は同じ意味じゃないので注意!

 よく勘違いされていますが、猟友会は「狩猟を行う組織」ではありません。猟友会は狩猟者の共済事業を行う組織であり、いうなれば〝保険会社〟です。
 巻き狩りなどを行う〝猟隊〟は任意団体です。そのため、猟友会に入会しても猟隊に入れるわけではありません。しかし、多くの支部猟友会は地元の猟隊と連携しているため、紹介してくれることがあります。

『支部猟友会』って必要なの?

 私たち狩猟者にとって最も身近なのが、市町村レベルで存在する支部猟友会です。主に狩猟者登録の手続き代行をしてくれる組織ですが、インターネットの普及や高齢化などで、その存在意義が問われる時代になっています。

駆除隊 ≒ 支部猟友会の現状

「猟友会は狩猟を行う組織ではない」と述べましたが、〝実質〟として、その地域の有害鳥獣捕獲活動に従事している人たちは、その地域の『支部猟友会会員』です。
 そのため「猟友会は必要」という意見もありますが、一方で、「そもそも地方自治体が農業被害対策を支部猟友会に〝丸投げ〟している現状に問題があるのではないか?」という意見もよく聞かれます。

未だに〝書類とハンコ〟の狩猟者登録

 支部猟友会は、狩猟者登録の手続き代行など、狩猟者にとって重要な役割を担っています。しかし、DX(デジタルトランスフォーメーション)で様々な行政手続きがオンライン化している昨今において、未だに書類とハンコ』でしか手続きできない狩猟行政というのは、時代遅れなのではないかと思います。

そもそも支部猟友会は存続できるのか?

 支部猟友会は「必要なのか?」という問いの前に、高齢化と後継者不足という深刻な問題を抱えています。現在、多くの支部猟友会は、ほとんどが70代、80代の高齢スタッフによって運営されており、若い人たちが活動していることはほとんどありません。よってこのままでは近い将来、全国の支部猟友会が自然消滅する可能性があります。
 実際に、市町村によっては支部猟友会と連絡が付かない(担当者が入院などの理由で連絡がつかない)ようなところも増えており、支部猟友会の立て直しが必要な状況に迫られています。

『都道府県猟友会』って必要なの?

 都道府県猟友会は、都道府県政の条例や告示などを取りまとめ、情報誌を発行したり、キジやヤマドリの放鳥、射撃会の開催などを行っています。

活動内容が不明瞭

 都道府県猟友会に対する率直な感想として、「どんな活動をしているのかよくわからない」という声が聞かれます。
 大日本猟友会の公式HPには、「キジ・ヤマドリの放鳥やキジとウズラの飼育」といった情報が掲載されていますが、これらの情報は古く、現在の活動内容を把握することが難しいという課題があります。

〝放鳥〟は必要なのか?

 都道府県猟友会は、「生態系を維持するため」にキジやヤマドリの放鳥を行っています。しかし、この取り組みは近年、疑問視されるようになっています。
 例えば、近年の研究では、サクラマスの放流によって他の川魚が淘汰され、『逆に川の環境が悪化した』という報告があります。

 キジやヤマドリについては詳しい研究はありません。しかし、飼育された動物を野に放つ行為は、〝自然界への人為的な介入〟であり、生態系に悪影響を与える可能性も指摘されています。

情報収集だけならインターネットで十分

 都道府県猟友会には、当該と都道府県の狩猟情報を発信するという役割があります。しかしこの情報発信も、インターネットが普及した現在において必要性は感じられません。
 もちろん、都道府県猟友会が〝1次情報〟を発信しているのであればその限りではありませんが、交付している冊子も、結局のところ県庁HPで閲覧できる内容だったりします。

積極的に活動している都道府県猟友会もある

 ここまで、都道府県猟友会の必要性に〝ギモン〟のある内容で話を進めましたが、決してすべての都道府県猟友会の活動が不明瞭なわけではありません。
 例えば公益社団法人大阪府猟友会は、47ある都道府県の中でも精力的に活動している組織だといえます。この猟友会は活動内容をHPやSNSで配信しているほか、会員・非会員関係なく参加できるフェスや講習会を開催し、狩猟に関する様々なコンテンツを提供しています。
 こういった活動があれば、都道府県猟友会の会費を支払う意義もあるのではないでしょうか?

『大日本猟友会』って必要なの?

 大日本猟友会は、狩猟者の権利を政府に訴えかける圧力団体としての役割を担っています。例えば、将来「狩猟の全面的禁止」を訴える政党が現れ、国会で議席を増やした場合、「狩猟は日本国民の権利である」としてロビー活動ができるのは大日本猟友会しかありません。

会長のリーダーシップ

 2025年現在、大日本猟友会の会長は、元・衆議院議員の佐々木洋平氏です。2022年に出版された著書を見る限り、〝激動の時代〟を乗り越えてきた強いリーダーシップの持ち主であることは間違いありません。
 しかし現代において、彼のやり方が通用するのか疑問視する声は多数聞かれます。また、政界が代替わりする中、彼が持っている〝政界へのコネクション〟が、政治の中枢に達しているのか疑問視されます。

現在の大日猟は迷走している

猟友会新ベスト

 狩猟者として大日本猟友会の必要性を考えると、この組織を潰すわけにはいきません。しかし、近年の活動が『2億円の借入を作り開発した、機能性が劣化した新型猟友会ベスト』だったり『実用性の薄い狩猟アプリの開発』だったりと、その活動は〝迷走〟しているように見えます。
 さらに、『バックショットに関する発言(※1)』や『くくり罠12㎝規制の計測に関する発言(※2)』など、狩猟業界を〝後ろから刺す〟ような発言を行っている点も、各狩猟関連団体から不信感を買う要因となっています。

(※1)バックショットの関する発言とは?

 2017年2月に、大日本猟友会が構成員に対して「大粒散弾(バックショット)の使用を禁止する」通知を発行した件。大日本猟友会側は「バックショットは跳弾による事故の危険性が高い」と意見したのに対して、猟用資材工業会側は「人為的な過失責任をバックショットに転嫁したもの。危険性の指摘には科学的根拠がない」と反論を行った。

(※2)くくりわな12㎝規制の計測に関する発言とは?

 2021年に、「くくり罠の直径の計測法を『短径』ではなく『長径で12㎝にするべき』」と発言した件。これに対して、わな猟具メーカー側は「現実的な運用において、短径は12㎝であるべき」と反論。
 結果的に行政側は従来の基準(短径12cm)を認める形で落ち着いたが、わな猟具メーカーはこの『猟友会の発言』の対応に対して、数年間の時間とコストを費やすことになった。

猟友会員になって〝発言〟するしかない

 こういった状況を改善するには、あなた自身が猟友会員になり、発言権を持つしかありません。世間では「猟友会なんて存在する意味はない」と言われることがありますが、そうではありません。「猟友会を意味のある存在に作り替えよう!」という考えが、これからの狩猟を支えていく力になるのです。

まとめ

  1. 『支部猟友会』は、狩猟者登録手続きのデジタル推進が必要。組織の必要性よりも、そもそも存続できるのかが疑問
  2. 『都道府県猟友会』は、行政との情報共有で必要な組織。だが、地域差でサービスの質にバラつきが大きい
  3. 『大日本猟友会』は、政府への圧力団体として必要な組織。しかし、現状は〝迷走〟が目立つ
  4. 猟友会員はしっかりと声を上げて改革を進めるべき

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