知識試験と適性試験に無事合格したら、次はいよいよ技能試験です。わな猟・網猟免許試験においては、試験に落ちる9割はこの実技試験と言っても過言ではありません。一発合格を目指して万全の準備を整えましょう。なお、第一種・第二種銃猟免許と鳥獣判別試験に関しては、別のページで詳しく解説をしています。


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- 「はこわな」は、ほぼ確実に法定猟法と判断できる
- 「くくりわな」は、締め付け防止金具とよりもどしの2点を確認する
- 「はこおとし」は、中に「さん(ストッパー)」があることを確認する
- 「とらばさみ」は、複数出題されても、すべて違法と判別する
- 「とりもち」は、わなでも網でも違法と判別する
- 「むそう網」は、足杭が可動式であればOK、動かない場合は「固定式はり網」としてNG
- 「はり網」は、「うさぎ網」と手で動かす「谷切網」だけは例外的に法定猟法
- 「つき網・なげ網」は、出題されることは稀だが、法定猟法
- わなの架設は「小型はこわな」を優先的に選択する
- 網の架設は「片むそう」で行われることがほとんど
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実技試験の出題内容
免許区分 | 試験の項目 |
---|---|
わな猟 | 違法わなの判別6問 わなの架設 |
網猟免許 | 違法網の判別6問 網の架設 |
狩猟免許試験の法的な実施基準は、鳥獣法施行規則第五十三条に定められています。しかし、この法令では試験の具体的な内容や詳細な評価基準までは明記されていません。そのため、実際には多くの都道府県で、一般社団法人大日本猟友会が示している実施要領や基準を参考にして試験が行われています。この記事では、この猟友会の基準に沿って解説を進めます。
実技試験の評価方法
試験の評価は、持ち点100点からの減点方式で行われます。全ての試験項目を終了した時点で、70点以上が残っていれば合格となります。
減点となる事項は、猟友会基準で公表されています。中には「-31点(その時点で不合格)」といった大きな減点項目もあるため、特に注意が必要です。
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猟具(わな)の判別

わな猟免許の技能試験では、使用が許可されている法定猟具と、使用が禁止されている猟具を正しく判別する能力が試されます。試験会場には、テーブルや地面にいくつかのわなが並べられており、受験者は一つ一つについて「これは法定猟具です(使用できます)」「これは禁止猟具です(使用できません)」と口頭で回答します。
減点事項
事項 | 減点数 |
---|---|
判別を誤った | 5(毎) |
猟友会の基準では、「法定猟具3つ、禁止猟具3つ」とされていますが、都道府県や試験実施年度によって、出題数が5~8つと開きがあり、さらに使用される猟具の種類にも違いが見られます。猟具は実際に手に取って確認できるので、落ち着いて回答しましょう。
出題されやすい『わな』の種類
猟具の名称 | 猟具の種類 | 判定 |
---|---|---|
はこわな | 小型箱わな(踏板式) | 〇 |
小型箱わな(吊り餌式) | 〇 | |
大型箱わな | 〇 | |
くくりわな | 足くくりわな(締め付け防止金具・よりもどし付き) | 〇 |
足くくりわな(締め付け防止金具なし) | × | |
足くくりわな(よりもどしなし) | × | |
小動物用くくりわな(締め付け防止金具付き) | 〇 | |
小動物用くくりわな(締め付け防止金具なし) | × | |
筒式イタチ捕獲器(締め付け防止金具付き) | 〇 | |
筒式イタチ捕獲器(締め付け防止金具なし) | × | |
はこおとし | はこおとし(さん付き) | 〇 |
はこおおとし(さん無し) | × | |
とらばさみ | とらばさみ(歯付き) | × |
とらばさみ(歯なし) | × | |
胴バサミ | × | |
とりもち | グルートラップ | × |
一般的に出題されやすい「わな」は、上表の通りです。試験では猟具の正式名称や禁止理由まで詳細に問われることはないようですが、正しい知識として理解しておくことが望ましいでしょう。
はこわな

はこわなは、四方を金属メッシュや板などで囲まれた箱状で、獲物が中に入り仕掛けに触れると扉が閉まる構造をしています。この構造で禁止猟具に触れる構造の物はないため、「はこわな」と判断が付けば法定猟具と判断して問題ありません。
サイズによる違い

はこわなは、大きさによって「小型はこわな」と「大型はこわな」に分けられますが、どちらも法定猟具として認められています。多くの試験会場では、スペースの都合上、小型のはこわなが用いられる傾向にあります。
なお、法定猟具には囲いわなという似たようなわなもありますが、大型はこわなよりもさらに大型なので、試験で出題される可能性は極めて低いと考えられます。
作動方式による違い
はこわなには、箱の底にある踏み板を獲物が踏むことで扉が閉まる「踏板式」と、吊り下げられた餌を獲物が引っ張ることで扉が閉まる「吊り餌式」の2つの代表的な作動方式があります。どちらの方式も法定猟具です。
くくりわな

くくりわなは、金属製のワイヤーの先端が輪になっており、その輪で獲物の足などを拘束して捕獲するわなです。くくりわなには多くの種類がありますが、試験で法定猟具か禁止猟具かを見分ける際には、締め付け防止金具とよりもどしの2つの部品を確認しましょう。
締め付け防止金具の有無

締め付け防止金具は、くくりわなの輪が完全に締まりきってしまうのを防ぐための部品です。輪が完全に締まると、捕獲された獲物の体や足を切断してしまう可能性があるため、この金具の装着が法律で義務付けられています。
判別する際は、くくりわなの輪を手で縮めてみましょう。途中で輪が金具にひっかかり、完全に締まりきらなければ法定猟具と判断できます。
よりもどしの有無
よりもどしは、ワイヤーのねじれを防止し、強度低下や切断を防ぐための金具です。くくりわなにかかった獲物が暴れるとワイヤーがねじれやすくなるため、イノシシやシカといった大型獣を対象とするくくりわなには、よりもどしの装着が法律で義務付けられています。
筒式のくくりわな


くくりわなの一種である「筒式くくりわな」は、主にイタチを捕獲するために用いられます。このわなも、大型獣用のくくりわなと同様に、輪が完全に締まりきらないようにするための締め付け防止金具(またはそれに相当するストッパー機能)が必要です。筒の内部に、ワイヤーの輪が過度に締まるのを防ぐ金属ワッシャーなどのストッパーが確認できれば法定猟具、無い場合は禁止猟具と判断します。
中小型獣用くくりわなには「よりもどし」は必須ではない
リスやタヌキなどの中小型獣を捕獲するための中小型獣用くくりわなについては、よりもどしの装着は必須とされていません。ただし、試験では大型獣用のくくりわなを想定した問題が出題されることが一般的ですので、「よりもどしが付いていないくくりわなは禁止猟具」と理解しておくと判断しやすいでしょう。
大型獣用くくりわなのワイヤーは4mm以上
もし試験で、「締め付け防止金具」と「よりもどし」の両方が装着されているくくりわなが2種類提示された場合は、ワイヤーの太さに注目しましょう。
イノシシやシカを捕獲するくくりわなに使用するワイヤーは、直径が「4mm以上」であることと定められています。したがって、もし一方のワイヤーが明らかに細い場合は、使用が禁止されている猟具と判別できます。
これは非常に細かい判別ポイントですが、過去の試験で実際に出題された例もあるため、覚えておくと良いでしょう。
はこおとし

はこおとしは、四角い箱の上部が可動式の天井になっており、箱の中に獲物が入ると天井が落下して閉じ込める仕組みのわなです。箱わなが「扉」で獲物を閉じ込めるのに対し、はこおとしは「天井」で閉じ込める点が異なります。
さん(ストッパー)」の有無が判別のポイント

はこおとしが出題された場合は、箱の内部をよく確認してください。箱の内側に、落下する天井が途中で止まり、獲物との間に隙間を確保するための角材(さん)が装着されていれば法定猟具です。逆に、この「さん」が無いタイプは、中に入った獲物を天井で圧死させてしまう危険性があるため、禁止猟具と判断できます。
とらばさみ

とらばさみは、獲物がわなを踏むと、バネの力で左右に開いた金属製の顎が閉じて、獲物の体の一部(主に足)を強力に挟んで捕獲する構造のわなです。
どのタイプでも現在は禁止猟具
とらばさみは、平成19年以前は一定の規格(内径12cm以内、鋸歯なし)を満たせば法定猟具とされていた時期もありました。しかし現在は、どのようなタイプであっても、とらばさみは全面的に禁止されています。
試験で複数のとらばさみ(例えば、歯のあるものと無いもの)が出題されたとしても、どちらも禁止猟具であると正しく判断しましょう。
グルートラップ

グルートラップは、とりもちなどの強力な粘着性物質を板や地面に塗り、その上を通過したリスなどの小動物を粘り付かせて捕獲するわなです。このような粘着物質を使用する猟法は、獲物を無差別に捕獲し、不要な苦痛を与えるため禁止されています。試験で「缶」に入ったものが出題された場合は、確実に「とりもち」なので、禁止猟具と判断してください。
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猟具(網)の判別
事項 | 減点数 |
---|---|
判別を誤った | 5(毎) |
網の判別試験も、わなと同様に、法定猟具と禁止猟具を正しく判別する能力が問われます。減点項目もわな猟試験と同様で、1問誤答するごとに5点が減点されます。
出題されやすい『網』の種類
猟具の名称 | 猟具の種類 | 判定 |
---|---|---|
むそう網 | 片むそう | 〇 |
両むそう | 〇 | |
穂打ち | 〇 | |
はり網 | はり網(可動式) | 〇 |
はり網(固定式) | × | |
かすみ網 | × | |
うさぎ網 | 〇 | |
谷切網 | 〇 | |
つき網 | うずら網 | 〇 |
なげ網 | 坂取網 | 〇 |
とりもち | もち網 | × |
はご | × | |
つりばり | はえ縄 | × |
網猟試験に出題される可能性のある猟具は上表の通りです。わなと同様に、各猟具の特徴と判断ポイントを理解しておきましょう。
むそう網

むそう網は、左右に支柱が付いた網を、人が手綱を引いて操作し、獲物の上にかぶせるようにして捕獲する猟具です。「片むそう」(網が一方向に倒れる)や「両むそう」(網が両側から閉じる)、「穂打ち」(袋状に開く)など複数の種類がありますが、試験会場のスペースの都合上、コンパクトな片むそうが出題されることがほとんどです。
足が固定されているか、可動式かで判断する

2本の支柱と1枚の網で構成された猟具が出題されたら、支柱を地面に設置するための足杭(またはそれに類する部分)の形状を確認しましょう。足杭が前後に傾倒できるように工夫された「可動式」であれば、法定猟法の「むそう網」と判断できます。一方、足杭が地面に完全に固定されていて動かせない場合は、「はり網」とみなされ禁止猟法となります。
うさぎ網

はり網は、地面や空中に網を張っておき、そこに飛び込んだ獲物を絡め捕る猟具です。先に述べた説明したように、人が操作せずに常に張っておくはり網は禁止猟具とされています。しかし、ウサギの捕獲を目的として地面に張っておく「うさぎ網」だけは例外的に法定猟具として認められています。
谷切網

はり網の例外には、もう一つ「谷切網」があります。これは、通常時は網を地面に伏せておき、対象となる鳥が飛来したタイミングを見計らって、人が手綱などを操作して網を垂直に持ち上げて捕獲するタイプのはり網です。網を固定する支柱の足杭自体は地面に固定されていますが、網を操作するための滑車や手綱といった機構が付いていることで、人が操作する谷切網であると判別できます。
かすみ網

「かすみ網」は、むそう網などと比較して非常に細い糸で作られており、鳥の目からは見えにくいため、飛来する鳥を無差別に、かつ大量に捕獲してしまう可能性が高い網です。そのため、現在は禁止猟法となっており、さらに使用だけでなく所持することも禁止されています。
つき網

つき網は、長い竿の先に取り付けられた網を、獲物に対して突き出すようにして使用します。元々はウズラの捕獲に用いられていましたが、現在はウズラが狩猟鳥獣から除外されているため、実際の狩猟現場で見かける機会はまずありません。猟具としてはかなり大きいため、試験では小型化された模型が用いられることが一般的です。
なげ網

なげ網は、飛来する獲物に対して投げつけて捕獲するタイプの猟具です。見た目はつき網に似ていますが、獲物が網に絡みつくと袋状になる点が異なります。
主にカモなどの伝統的な猟法に用いられており、石川県の坂取網猟や鹿児島県南種子町のカモ猟などが有名です。非常に特殊な猟具であるため、これらの伝統猟法が行われている地域以外で試験に出題されることは稀であると考えられます。
とりもち・はご

もち網は、網にとりもちなどの粘着性の物質を塗り、それに触れた鳥が網に絡みついて捕獲されるというものです。わなの項目で解説したグルートラップと同様に、粘着性のある物質を用いた狩猟は、獲物を無差別に捕獲するため禁止されています。これに類する猟具として、棒の先に粘着物を塗って小鳥などを捕獲する「はご」がありますが、これも現在では禁止猟具です。
わなと網の架設
猟具の判別試験が終わると、試験官から「(判別した法定猟具の中から)どれか一つを選んで架設してください」と指示があります。受験者は、法定猟具と判断した道具の中から一つを選び、実際にそれを仕掛ける動作を行います。
減点事項
事項 | 減点数 |
---|---|
架設ができなかった | 31 |
架設が不完全だった | 20 |
架設が円滑でなかった | 10 |
架設の試験では、「できなかった」と判断された場合、不合格となります。そのため、自身が受ける狩猟免許試験会場で、どのような猟具が出題されるかは、予備講習に参加するなどして必ず情報を仕入れておきましょう。
わなは「はこわな」、網は「むそう網」を選ぶ
架設するわなや網の種類は、猟友会の基準では特に指定されていませんが、わな猟の場合は、比較的簡単に架設できる「はこわな」を選択するのが一般的です。
網猟の場合は、ほとんどの場合「むそう網」の架設が求められます。ただし、なげ網の伝統猟法がある地域など、特定の地域では試験内容が異なる可能性も否定できません。
箱わなの架設方法

はこわなにも多くの種類がありますが、多くの試験会場では「ハバハート式」に代表される、扉から伸びた金属棒(セット棒)を踏み板の掛け金にセットするタイプのわなが使用される傾向にあります。

はこわなを安定したテーブルの上に置いたら、まず扉(シャッター)から伸びている金属のセット棒を、指で下方向に押し下げます。これにより、左右(または上下)の扉が開きます。

この状態で、箱の内部底面にある踏み板に付いている掛け金(トリガー機構)に、セット棒の先端を引っかけます。少しコツが必要ですが、バランスを見ながら丁寧に操作してください。 手を離しても扉が開いた状態を維持できたら、「架設できました」と試験官に報告しましょう。

試験官から「わなを作動させてください」といった指示があったら、用意されている細い棒などで、わなの踏み板を軽く押してください。すると、セット棒と掛け金のかみ合いが外れ、扉が「ガチャン!」と勢いよく閉まります。「わなを作動させました」と報告して、この試験項目は終了です。
網の架設方法

むそう網の架設試験では、網本体、支柱、手綱(テグス)、固定用の椅子(試験会場によってはテーブルや地面に固定された杭)が用意されています。実際のむそう網は10m近い大型のものが一般的ですが、試験で使用されるのは2~3m程度の小型のものがほとんどでしょう。

試験が開始されたら、それぞれの部品をおおよその位置に配置します。

網の端には、支柱を通すためのループ(輪)が付いています。ここに左右の支柱をそれぞれ通します。

網の上辺にある輪や紐を、支柱の上端に結びつけます。一般的には、解けにくく、かつ必要に応じて解きやすい「もやい結び」などが用いられますが、試験では網が確実に固定できる結び方であれば、ひとまず問題はありません。

支柱の下部を、地面に設置された足杭(またはそれを模した固定器具)に差し込み、網がスムーズに跳ね上がるようにセットします。

手綱の長さや張りを調整し、網がスムーズに作動するようにします。全体の設置が完了したら「準備ができました」といった旨を試験官に伝えましょう。

試験官から合図があったら、手綱を勢いよく引いて網を動かします。網が手前に倒れれば成功です。「作動させました」と伝えて、試験終了です。
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まとめ
- 「はこわな」は、ほぼ確実に法定猟法と判断できる
- 「くくりわな」は、締め付け防止金具とよりもどしの2点を確認する
- 「はこおとし」は、中に「さん(ストッパー)」があることを確認する
- 「とらばさみ」は、複数出題されても、すべて違法と判別する
- 「とりもち」は、わなでも網でも違法と判別する
- 「むそう網」は、足杭が可動式であればOK、動かない場合は「固定式はり網」としてNG
- 「はり網」は、「うさぎ網」と手で動かす「谷切網」だけは例外的に法定猟法
- 「つき網・なげ網」は、出題されることは稀だが、法定猟法
- わなの架設は「小型はこわな」を優先的に選択する
- 網の架設は「片むそう」で行われることがほとんど
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