【体験レポート】計画を立てても、狩猟はうまくいかないもの【イノシシ捕獲】

狩猟ツアーでは、常に不足の事態が起こった場合に備えて、様々な代替案を考えておくことが大切です。しかし、野生の生命力はあなどれないもの。現場では思い通りにいかないことだらけです。
今回は、そんな知略と体力の限界を尽くして戦った、ある激動の狩猟ツアーについてご報告します。

目次

期待を裏切る「80kg超」の巨大な主

2026年1月8日。この日は2名のお客様をお迎えしての狩猟ツアーでした。
向かったのは、事前に複数の群れの形跡を確認していた、通称「イノシシ・パラダイス」。
前日に侵入ルートも完璧に読み、くくりわなを設置していたため、捕獲はほぼ確実視していました。

1月にあるまじき高温

しかし、私の計画はその日の朝から崩壊の兆しがありました。
なんとこの日の最高気温は「18℃」。季節外れの4月上旬並みの気温です。
狩猟にとってはあまりに暖かすぎるのは厳禁。
もしこの気温で「大型のイノシシ」を捕獲してしまうと、肉の劣化が急激に進んでしまいます。
品質を保つためのベストなシナリオは、サクッと扱える20kgほどの「子豚ちゃん」が掛かることでした。

そしてツアー当日。
「親シシは嫌だ‥‥、親シシは嫌だ‥‥、親シシは嫌だ‥‥、」と心の中で願い、いざ現場に到着してその目に映った光景はッ!?

願いむなしく「超大型イノシシ」

「ぐぇっーーーー!!で、デカい!!」

願いを嘲笑うかのように暴れ回る、丸々と太った巨大な親イノシシ。
その瞬間、私の頭の中で組み立てられていたスマートなオペレーション計画は、音を立てて崩れ去りました。

生け捕り計画大失敗!

子豚サイズであれば、止め刺し→解体→昼食→解散という通常プランで進行できましたが、大型イノシシではその策が使えません。
今日のような気温では、大型の場合はすぐに肉を冷やすために、解体後すぐに熟成庫へ直行しなければなりません。
しかし、伊達に狩猟ツアーのプロを名乗っているわけではありません。
万が一の事態に備えて「プランB」を練り上げていました。

思いもよらないパワーで「生け捕り」失敗!

私の用意していた「プランB」。
それは、イノシシを生け捕りのままベースキャンプへ搬送し、その後昼食、気温が下がる夕方まで待って解体し、ツアー解散と共に自宅の熟成庫へ直行するという「時間差作戦」です。
「完璧なプラン変更だ!」
そう自負して、ガムテープでイノシシの目隠しをし、四肢を縛って保定完了‥‥と思っていたら。

「ぎちぎち!!」

今にも千切れんばかりに軋むロープの悲鳴を聞いて背筋が凍りました。
この個体、
「あまりにパワーが強すぎるッ!!」
経験上、10㎜の太さのポリエチレンロープは、そう簡単には千切れません。
しかし、万が一運搬中に荷台から脱走でもされればツアーどころか大惨事です。
これはリスクが大きすぎると判断した私は、即座に「プランC」へと舵を切りました。

急遽止め刺しに変更し、マルチオペレーションを開始

リスクを考えてその場で止め刺し。キャンプへ緊急搬送して解体作業を先に行うことになりました。
そこからはまさに修羅場。
お客様にはイノシシの「焼き剥ぎ」を指示しつつ、こちらではキャンプの設営と焚き火の管理。
昼食の準備をしつつ、お客様には事前に準備していた「イノシシの足1本」の解体指南。
昼食をとっていただいている間に、こちらは捕獲したイノシシの内臓出し、大バラシ作業を行います。

セルフスタイルの「イノシシ鉄板焼き」

腕が6本無いと不可能に思えるマルチオペレーションですが、聡明なわたくしはこんな状況になることも考えて、本日のジビエランチは「イノシシの鉄板焼き」にしていました。

イノシシの鉄板焼き、それはお客様自身が肉を焼く「焼肉屋システム」。
こちらで肉、野菜、ご飯を用意しておけば、あとはお客様の方で焼いてお召し上がりいただけます。
こちらがいなくても料理のオペレーションが回せるという、まさにベストプランです。

お客様に焼き肉を楽しんでいただいている間、私は解体したイノシシを熟成庫に入れるために一旦離脱。
急いで自宅へ向かうのでした。

熟成庫に入らない!!

ツアーを一時抜け出し、なんとか自宅まで肉を運び込みましたが、本当の地獄はここから。
なんせ、今回のイノシシは80㎏を超える大型の個体なので、頭を切り落としても全長1メートルはあります。
そのままでは我が家の熟成庫に収まらないため、私はキッチンに巨大な肉塊を持ち込み、頸椎を断ち、胴体を分離する緊急オペを開始しました。

どうしても扉が開いてしまう

イノシシを三分割して、皮を流水で流して焼きカスを除去。
肉を給水シートで巻いて熟成庫に吊るします。
これで後はキャンプに戻り、お客様の対応を済ませてキャンプの撤収。
「色々とトラブルはあったが、完璧なプランだ」
そう思いながら最後の肉塊を熟成庫に収めようとしたそのとき!

「肉が熟成庫にはいらない!!」

どんなに頑張って押し込んでも、無情にも「パカり」と開いてしまう熟成庫の扉。
10㎏近くある肉塊をあれやこれやと配置換えしていると、熟成庫の棚が外れて「肉雪崩」を起こしてしまいました。

しかし、聡明でクレバーでプリンスなわたくしは、万が一熟成庫に肉が入らない場合の別プランが…

ねぇよそんなもん!!

肉塊を無理やりねじ込み、ドアを高粘着のダクトテープでぐるぐる巻きに固定。
さらに、子供用の椅子とソファーをバリケードのように積み上げ、ドアが開かないよう封印しました。

最後に待ち受けていた最強の敵

無事に肉は熟成庫に入りましたが、なんだかんだこの格闘に1時間以上を費やしてしまいました。
キャンプに戻った頃には、既にお客様は解散した後。
私は日が暮れる中で一人寂しく撤収作業を行い、怒涛の一日が終わったかのように思えました。

結論「狩猟は予定通りにいかないことが多すぎる」

疲労困憊で自宅に帰り着いた私を待っていたのは、真っ赤な顔をした妻の姿でした。

「椅子とソファーをこんなところに移動させて、どうするつもりなの?」

その夜は、ボロボロの体に鞭を打ち、深夜まで精肉作業に励むこととなりましたとさ。

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