テレスコピックサイト

テレスコピックサイト(Telescopic-Sight

 テレスコピックサイトは、レンズを組み合わせて遠くの標的を拡大する機能を持つ照準器で、一般的にはスコープと呼ばれています。スコープは、よく望遠鏡と勘違いされることもありますが、スコープにはレティクルと呼ばれる照準点を表す印が内部に組み込まれている点、また射撃の衝撃に耐える高耐久性持っている点で大きく違います。

スコープの歴史

 スコープの登場は銃器が本格的に戦争で利用されるようになった17世紀ごろに誕生しました。しかし当時のスコープは一般的な望遠鏡を銃にくくりつけて使用していたため、射撃の反動でレンズが割れたり銃との接合部がズレたりしたため、信頼性に大きな問題がありました。

マルコム式スコープ
 世界初の実用的なスコープが、1855年のアメリカでウィリアム・マルコムによって開発されたマルコム式スコープです。このスコープは射撃に耐えられる頑丈な造りをしていただけでなく、取り付け位置を上下に調整できるノブが取り付けられており、ゼロイン調整を行う仕組みが盛り込まれていました。さらに全長を伸縮できる構造なっているので、拡大率を3~20倍に変更できるようにもなっていました。
 このスコープは1861年から1865年にかけて行われたアメリカの南北戦争において多数使用され、後の狙撃銃(スナイパーライフル)の開発や、射撃術の発展へとつながっていきました。

スコープの構造

 現代で広く使用されているスコープには、様々なダイヤルノブ(※デジタルに切り替えられるツマミがダイヤル、アナログに調整できるツマミがノブ)が付いています。これらのツマミは、メーカーなどによって種類・名称が違いますが、主にエレベーションダイヤル、ウィンテージダイヤル、フォーカスノブ、パワーセレクター、ディオプターダイヤルの5種類が付いています。

エレベーションダイヤル (Elevation Adjustment)

 エレベーションダイヤルは視界の上下方向を調整するダイヤルです。このダイヤルには『UP → 1/4” 1CLICK』といった表示がされており、矢印方向にダイヤルを1目盛り回すことで、1/4インチ照準を上げることができます。

 ここで注意しないといけないのが、この「上がる」という意味は、レティクルが上がるのではなく、”着弾点が上がる”という意味です。例えば、スコープ調整のために的紙に向かって射撃をしたさい、着弾点が中心よりも3インチ(7.6㎝)上だったとします。これを修正するために、エレベーションダイヤルをUP側に12目盛り回すと、着弾点が3インチ上がってしまうので、結果的に着弾点は6インチ(15.2㎝)上にずれてしまいます。よってこの場合は、着弾点を3インチ下げるために、エレベーションダイヤルをDown側に12目盛り回さなければなりません。

ウィンテージダイヤル (Windage Adjustment)

 ウィンテージダイヤルは、視界の左右方向を調整するダイヤルです。このダイヤルには『L ↔ R 1/4″ 1CLICK』といった表示がされており、矢印方向にダイヤルを1目盛り回すことで、1/4インチ左右に照準を調整できます。
 このダイヤルもエレベーションダイヤルと同じように、回すとレティクルではなく、着弾点が移動します。例えば、着弾点が3インチ右にずれていた場合、着弾点は左に3インチ移動させないといけないので、ダイヤルはL方向に12目盛り回すことになります。

フォーカスノブ (Parallax Focus Knob)

 フォーカスノブはピント(フォーカス)を合わせるためのつまみで、ピントリングとも呼ばれます。フォーカスノブにはスコープの中央(エレベーションダイヤル・ウィンテージダイヤルと同じ位置)に取り付けられたサイドフォーカス(CFまたはAS)タイプと、対物レンズの周囲に取り付けられたフロントフォーカス(FFまたはAO)があります。
 どちらを利用するかは好みにもよりますが、サイドフォーカスは銃を構えた状態で操作ができるため、すぐにフォーカスを合わせられるといったメリットがあります。対してフロントフォーカスは、銃を構えたままでは操作しずらい位置ですが、ノブの径が大きいので、サイドフォーカスよりも小さい力で回すことができます。
 スコープのフォーカスには、絞りを小さくして、どのような距離でも”ざっくりピントが合う”ように作られたものもあります。このようなスコープは、フォーカスをいちいち調整しなくても良いため、飛び出してきた獲物を素早く射撃すること大物猟などに向いています。

 ただしフォーカスが合っていない状態でスコープを覗き込むとレティクルの位置が実際の照準点よりもズレる、視差(パララックス)という問題が発生します。装薬銃を使った銃猟の場合は、照準点が少々ズレていたとしても、弾が命中すれば獲物に大きなダメージを与えるため、”獲物を捕獲する”という目的に、それほど影響しません。
 しかしエアライフルの場合は弾の威力が弱いため、命中した個所によって『獲物を仕留めきれるか・半矢になるか』が決まります。よってエアライフルハンティングでは、フォーカスを細かく・素早く変更できるタイプがオススメです。

ディオプターダイヤル (Recticle Focus Ring) 

  ディオプターダイヤルはレンズの度数を調整するダイヤルで、視度調整リングとも呼ばれます。眼鏡と同じ機能なので、個人の視力によってディオプターダイヤルを調整し、もっとも見えやすい設定を見つけましょう。

パワーセレクター(Magnification Adjustment Ring)

パワーセレクター

 パワーセレクターはスコープの倍率を設定するつまみです。つまみには数値がならんでおり、この数値を本体に記された目印の位置に回すことで倍率を設定できます。
 倍率はスコープの名前に『〇-×』と表示されいます。例えば「3-9×44」という表記では、『最低倍率3倍、最高倍率9倍の性能を持っている』ということを示しています。

スコープの内部構造

スコープの内部構造

 スコープは望遠鏡に比べて複雑な仕組みを持っているため、沢山のレンズを使用しています。その仕組みはメーカーや機種によって設計が違いますが、ここでは最もベーシックなスコープの造りについて解説をします。

接眼レンズ (Eyepiece)

 接眼レンズはスコープや双眼鏡などの光学機器おいて、目に近い方のレンズを指します。このレンズは鏡筒内に結ばれた光(実像)を人間の瞳孔に収まるサイズに収束させる役割を持っています。よって接眼レンズは、その設計によって接眼レンズと瞳までの最適なアイレリーフが違います。
 一般的な双眼鏡であれば接眼レンズに目をベタ付け( 短い アイレリーフ)でも良いですが、スコープの場合は銃を構えながら覗かないといけないためアイレリーフはある程度長く設計されていなければなりません。特に装薬銃用のライフルではアイレリーフが短すぎると、反動でスコープが跳ね上がり目の上を切ってしまう危険性があります。

対物レンズ (Objective Lens)

 対物レンズはスコープや双眼鏡などの光学機器おいて、対象物に近い方のレンズを指します。このレンズは入ってきた光を屈折させて鏡筒内に像を作り出します。この像を接眼レンズで拡大(原理は虫眼鏡と同じ)することで、遠くのものを大きく見ることができます。
 光学機器では、入ってくる光の量が多ければ多いほど、明るく・鮮明な像を作り出すことができます。よって対物レンズの性能、例えば透過率や曲面精度といったパラメーターは、その光学機器の性能に直結しており、良い対物レンズを持つほどスコープや双眼鏡の値段が高くなります。なので1台数万円のスコープと数十万円のスコープとでは、機能的にはほとんど変わりはありませんが、対物レンズのグレードが段違いなので視界の透明感や明るさが断然違います。

正立レンズ群 (Prism)

 スコープや双眼鏡の対物レンズ・接眼レンズは、両方とも凸レンズを使用しています。よって凸レンズ2つだけでは像が倒立した状態になってしまい、スコープを覗くと逆さに見えてしまいます。そこで対物レンズと接眼レンズの間に挟まれているのが光の方向を変えるプリズムです。
 スコープの場合は対物レンズ・接眼レンズ意外にも内部に沢山のレンズが使用されているため、プリズムも沢山配置されています。よってこれらのレンズ・プリズムをまとめて正立レンズ群と呼ばれています。

レティクル (Reticle)

 レティクルはスコープの使用目的などによって様々な種類があります。狩猟における最も一般的なレティクルはクロスヘアと呼ばれる十字線ですが、簡易的な距離の測定ができるミルドットMOA、弾道の落下を補正するBDCSCBといったタイプもあります。これらのレティクルは電池で発光させるイルミネーターという機能が付いているタイプもあります。
 またレティクルは、倍率によってレティクルの大きさが変わるFFP(第一焦点面)と、大きさが固定のSFP(第二焦点面)の2種類に分けられます。

スコープのキーワードを覚えよう!

 スコープには、その性能を評価するための様々な用語があります。このすべてを熟知しておくことはかなり大変なので、対物レンズ有効径視野(FoV)アイレリーフひとみ径、の4つのワードを覚えておきましょう。

スコープのゼロイン調整

エアライフル用語集

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