デコッキング(Decocking)
デコッキングは、撃発可能な状態になっている銃の撃鉄(ハンマー、ストライカー)を、撃発できない状態に戻す動作を指す言葉です。
デコッキングは、猟銃(散弾銃・ライフル銃など)の場合は特に必要となる動作ではありません。しかしプレチャージ式エアライフルの場合は、安全な取り扱いをするうえで重要な動作となります
装薬銃におけるデコッキング
デコッキングの意義
デコッキングは、主にシングルアクション(撃鉄を起こして引き金を引く、2段階の動作を必要とする機構)の拳銃で必要とされる動作です。
シングルアクション拳銃に弾を装填すると、撃鉄が起きた(コッキング)状態になるので、何かの拍子で引き金が引かれると暴発します。そこで装填後に撃鉄を戻すデコッキングを行い暴発を防ぎます。
デコッキングの方法は、銃によっては専用のデコッキングレバーがあったりもしますが、一般的な拳銃であれば、撃鉄に指をかけた状態で引き金を引き、撃鉄をゆっくりと元の位置に戻します。
猟銃におけるデコッキング
さて、散弾銃やライフル銃などの猟銃の場合、多くの銃種で撃鉄が外部に出ていない無鶏頭(むけいとう)と呼ばれる構造をしています。そのためデコッキングは空ハジキ(ドライファイア)をするぐらいしか方法が無く、シングルアクション拳銃のように『弾が装填された状態で撃鉄をもとの状態に戻す』という動作はできない機構になっています(※日本ではそもそも、弾を装填した状態で銃を持ち運ぶことが禁止されています)。
空ハジキによる猟銃のデコッキングは、保管時にバネ部品にかかっている負荷を解放する目的が主になります。
プレチャージ式エアライフルにおけるデコッキング
猟銃においては重要性の薄いデコッキングですが、プレチャージ式のエアライフルにおいては重要な動作になります。なぜならプレチャージ式は空ハジキによってシリンダー内の高圧空気が噴き出す危険性があるからです。
さらにエアライフルは装薬銃とは違い、装填された弾を未発射の状態で取り出す排莢(イジェクション)機構がありません。そのため、弾が装填されたままになる可能性が装薬銃よりも高くなります。
そこでプレチャージ式エアライフルでは、射撃を終えた後は必ずデコッキングを行い、引き金が引かれても高圧空気が噴き出さない(万が一ペレットが装填されていた場合でも暴発しない)ようにしておく必要があります。
エアライフルのデコッキング方法
プレチャージ式エアライフルのデコッキングは、メーカーによって細かな違いはあるかもしれませんが、おおむね同じような原理です。
ここではデコッキングの必要性を理解しやすくするために、弾倉内の最後のペレットを発射 → 弾倉を抜く → デコッキングを行う、という動作を一連の流れとして解説します。
プレチャージ式のモデル
今回解説に使うプレチャージ式エアライフルのモデルは上図の通りです。プレチャージ式の詳しい解説については、こちらも併せてご参考ください。
なお、プレチャージ式のボルト操作は、アンダーレバー方式やサイドレバー方式、ブレイクバレル方式など色々ありますが、基本的な機構は変わりません。今回はサイドレバー方式を例に解説を進めます。
コッキング動作
レバーを引くと、レバーに連結されたボルトが後退します。このときボルトはストライカーに引っかかり、ストライカーのバネを圧縮しながら後退します。
この動作と同時に、弾倉からペレットが送り込まれて銃内部に装填されます。
レバーを引き切ると、ボルトが最後部まで後退します。このとき、シアーがストライカーの前方に飛び出します。
引き切ったレバーを戻すように動かすと、ボルトは前進します。このときストライカーはバネに押され、シアーにグッと噛み合います。
このストライカーの状態が「撃鉄が起きた」状態であり、ここまでの動作がコッキングになります。
コッキング動作と同時並行で、ボルトが弾倉内のペレットを押し出し、銃身にペレットの頭を押し付けます。
撃発
コッキングした状態から引き金を引くと、シアーが回転してストライカーとの噛み合いが外れます。すると、ストライカーはバネの反発力で勢いよく前方に飛び出し、バルブシャフトを強打します。
バルブシャフトを叩くとシリンダーの弁が開き、高圧空気が銃身内に噴き出します。銃身内の気圧が上昇すると、銃身に押し込まれていたペレットが前進して射出されます。
ストライカーに叩かれたバルブは、取り付けられたバネに押されて弁の口を閉じ、空気の流出がストップします。ストライカーはバネの復元力でもとの位置に戻ります。
弾倉の取り外し
弾倉内の最後のペレットを撃ち終えたら、弾倉を取り外さなければなりません。そこでレバーを引いてボルトを後退させ、弾倉内からボルトを引き抜きます。
レバーを引き切るとボルトと弾倉の噛み合いが外れるので、弾倉を引っ張って取り外します。弾倉を取り外した後は、レバーを戻してボルトを閉鎖するのですが、弾倉を抜く動作はコッキングと同じ動作です。
すなわち、何かの拍子に引き金が引かれると、ストライカーがバルブシャフトを叩いて高圧空気が噴き出す危険性があります。
そこで弾倉を抜いた後は、先にお話したデコッキング動作を行います。
デコッキング動作
デコッキング動作は、まず、レバーを引っ張ってボルトが前に動かないようにします。この状態で引き金を引き、シアーとストライカーの噛み合いを外します。
シアーとの噛み合いが外れると、ストライカーのテンションはボルトに移ります。
この状態でレバーをゆっくりと戻し閉鎖します。するとストライカーのテンションもゆっくりと解放されるので、バルブシャフトを強打することなく元の状態に戻ります。これでデコッキングが完了しました。
クリーニングペレットを使用
クリーニングペレットを使用される方は、弾倉を取り外したあとに銃身に詰め、レバーを戻して空ハジキをします。すると、デコッキングを行いながら銃身内部の掃除もできます。
なお、引き金を引くさいは、周囲に十分注意してください。クリーニングペレットは柔らかいフェルト生地で作られていますが、人に当たるとケガをする危険性があります。必ず布団などの柔らかい物に銃口を向けて射出してください。