エアレギュレータ

エアレギュレータ (Air regulator)

 エアレギュレータは、プレチャージ機構のエアライフルにおいて供給気圧を一定化させる装置です。このエアレギュレータを装着すると、射撃回数によるペレットの射出速度の変化を極力抑えることができます。

 

エアレギュレータの役割

エアレギュレーター説明

 PCP機構のエアライフルは、エアシリンダー内に200気圧以上の空気を貯め込み、そこから空気を小出しにしてペレットを放出する仕組みになっています。よってPCP機構では、発射回数が増えるほどエアシリンダー内の圧力が低下していくため、射出回数に比例する形でペレットの速度が低下していきます。
 このように射撃回数(ショットカウント)によって速度に差が生じると、事前にゼロイン調整をしていた位置よりも着弾が下がっていくため、結果的に精密性や獲物にヒットしたときの威力(ストッピングパワー)が低下するといった問題を生じます。

PCP機構の仕組み

 エアレギュレータの仕組みについて解説する前に、まずはプレチャージ機構の簡単な仕組みについて理解しておきましょう。PCP機構は大きく、トリガーユニット、バルブチャンバー、エアシリンダーの3つの部屋からできています。
 トリガーユニットにはストライカー(装薬銃で言うところの撃鉄ハンマー)が付いており、引き金が引かれることでバネの圧力が解放されて押し出される仕組みになっています。
 バルブチャンバーは、レットが装填されたレシーバーへ空気を送るポートが付いており、ポートはバルブでふさがっています。バルブにはステム(弁棒)がついており、ここをストライカーが叩くことでバルブが開くようになっています。
 エアシリンダーは空気を貯めるタンクの部分で、200気圧以上もの高圧空気を貯めておくことができます。

PCPエアライフルの仕組み2D

 PCP機構では①ストライカーが勢いよくステムを叩き、その衝撃でバルブが開いて高圧空気がポートに流れ出します。②バルブはエアシリンダーの高圧空気に押し戻されて即座に閉まり、③ストライカーのバネを縮めるレバーをコッキングすることで再び準備態勢になります。

 

 
 PCP機構の仕組みがよくわからない方は、風呂桶のゴム栓を排水溝側から叩いて開けているイメージで考えてください。ストライカーちゃんが止水栓を叩いて桶から少しずつ水圧を抜き取っているイメージです。

安定性の高い圧力帯

 

PCP気圧と発射圧の関係

 さて、PCP機構を考えるうえでとても重要になるのが、エアシリンダー内の残圧による射出圧の変化です。例えば先ほどの例で言うと、桶の水が多すぎる場合、弁にかかっている水圧が高すぎるため、ストライカーが叩いてもうまく開かないと言った現象が起こります。つまりエアシリンダーが高気圧のときは、弁の開きが不安定で弾速の誤差が大きくなります。
 逆に、桶の水が少なすぎる場合は水圧が低すぎて噴き出す水の勢いが弱くなるといった現象がおこります。つまりエアシリンダーが低気圧のときは、ペレットを射出する空気圧が低くなり弾速が低下します。

 すなわちPCP機構エアライフルは、エアシリンダー内の圧力が高くても・低くても弾速が不安定になるため、中頃の丁度良い空気帯で射撃を行う必要があります。この空気圧帯は英語では”Heart of fill"、日本では「美味しい空気圧帯」と呼ばれます。

エアレギュレータの役割

エアレギュレータの仕組み2D

 エアレギュレータは、先ほど述べた「美味しい空気圧帯」に射出圧を一定化させる機能を持っています。その仕組みはメーカーによって様々ですが、一般的にはスキューバダイビングのレギュレータにも使用されているバランスフロースルーピストンバルブが応用されています。
 このレギュレータは、気圧を受けて縮むピストンと、中空になっているパイプ、樹脂製の柔らかい素材で作られたバルブシートで構成されており、エアシリンダー(高圧側)とバルブチャンバー(低圧側)の間に装着します。

エアライフルのレギュレータの仕組み2D2

 レギュレータのピストンは、あらかじめ設定された圧力(図例では150気圧)でバネが縮みきり、パイプの口がバルブシートに押し付けられて閉じる仕組みになっています。
 ③でストライカーがステムを叩くと、バルブチャンバーの圧力(=レギュレータ内の圧力)が低下して、バネの反発力でパイプがバルブシートから持ち上がります。すると再びエアシリンダー内からの圧力がレギュレータ内に流入し、⑤のようにレギュレータ内の気圧を一定に保ち続けることができます。

エアレギュレータの短所

 エアレギュレータは意図的に減圧をするため、最高速度(最大パワー)が落ちるというデメリットがあります。例えば「ハイパワーPCPエアライフル」と呼ばれる機種は、通常よりも重たいペレット(ヘビーペレット)を射出する目的で設計されています。このようなエアライフルでは高圧帯を利用できるように調整されているため、エアレギュレータを挟むと本来持つパワーを発揮できなくなります。
 またレギュレータ内にはOリングと呼ばれるゴム製の部品が使われているため、劣化による故障が起きやすくなります。もちろんOリング自体はPCP機構のいたるところに使用されていますが、使用点数が多くなるほど故障のリスクは増加します。

付ける?付けない?迷ったときは

 購入したいと思うエアライフルに「エアレギュレータ付き・無し」の2つがあり、どちらを購入しようか迷ったときは、ひとまず自信が思い描くハンティングスタイルを考えてみてください
 例えば、もしあなたがエアライフルを罠の止め刺しなどにしか使わない場合、通常1~数発しか撃たないためレギュレータを付ける必要はありません。対してカワウやカラスの駆除では長時間同じ場所で射撃をし続けることが多いため、レギュレータ付きをオススメします。
 また、もしあなたが「精密射撃でバイタルポイントを的確に撃ち抜って仕留めたい」というスナイパースタイルであれば、レギュレータが付いていた方が安心です。しかし「射撃に対する美学よりも、とにかく獲物の捕獲にこだわりたい」というハンタースタイルであれば、獲物のどこにヒットしても”ノックアウト”できる重量弾の使用がオススメです。もちろんこの場合はエアレギュレータを付けてはいけません。

エアレギュレータの取り付け方

 

 一般的にエアレギュレータは、そのエアライフルのメーカーが推奨するメーカーの製品を購入して取り付けます。取り付け作業は、海外では自分で改造をすることも少なくありませんが、日本では武器等製造法により自宅で銃器を改造することは禁止されているため、必ず銃砲店で取り付けましょう。

エアレギュレータを取り付け可能なエアライフル

エアライフル用語集

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