狩猟用『鉛弾規制』で狩猟はどう変わる?

狩猟用鉛弾規制で狩猟はどうかわる

 2021年9月10日。環境省から鉛弾の使用規制を強化するという報道が流れました。2025年から段階的に進めていき、2030年までに全面規制の方針のようです。「具体的な内容は、これから検討していく」とのことですが、鉛弾が規制されると狩猟はどのように変わってくるのでしょうか?鉛弾規制の背景を踏まえて、考えていきましょう。


この記事の3つのポイント

  1.  野鳥保護のため、鉛の使用規制は当然ともいえる流れ

  2.  鉛弾規制自体よりも、『どこまで規制が及ぶのか?』この折衝が今後重要

  3.  鉛以外の弾丸は色々あるが、硬度が高い物が多いので跳弾の危険性が高くなる



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鉛弾規制の概要

まずは今回のニュースの概要を見てみましょう

狩猟で使われる鉛の銃弾による鳥類の中毒死を防ぐため、環境省は10日、2025年度から段階的に鉛製銃弾の使用を規制する方針を発表した
全国的な実態調査を今後進めた上、具体的な規制内容を決める。
小泉環境相は同日の閣議後記者会見で、「30年度までに鉛中毒発生ゼロを目指す」と話した。

(中略)

環境省は実態調査を踏まえ、規制する地域や銃弾の種類など具体的な内容を検討する

読売新聞オンライン
鉛規制は今に始まったことではない

 鉛弾規制のニュースを聞いた人の中には、「そんな!急にどうして!?」と驚かれた方もいると思います。しかし実を言うと、日本で鉛弾の使用規制の話が出たのは、今に始まったことではありません。

 先だって規制が始まっていたのが北海道です。北海道では、鉛ライフル弾、または粒径7ミリ以上の散弾は、使用はもとより、猟場での所持も禁止されていました。
 また本州においても、水鳥の主要繁殖地や越冬地となる水辺では、『鉛製弾使用禁止区域』が設定されていたりもします。

鉛弾が規制される理由『鉛中毒』とは?

 それでは、なぜ鉛弾は規制されているのでしょうか?これについて環境省は「野鳥の鉛中毒を無くすため」と説明しています。
 例えば、鉛弾を受けたシカが半矢で逃げ、行き倒れた死肉を鉛ごとイヌワシやオオタカ、クマタカといった猛禽類が食べたとします。
 鉛を食べたのが哺乳類の場合、すぐに糞として排出されるため、それほど大きな影響はないとされています。しかし鳥の場合、食べた鉛は胃袋的な臓器である砂嚢(砂肝)に残り続けて、体内に吸収されていきます。すると、脳や肝臓に鉛が蓄積していき、深刻な鉛中毒が引き起こされてしまいます。
 このような現象はカモなどの水鳥でも同じで、餌と一緒に地面に落ちていた鉛散弾を食べ、鉛中毒を起こすとされています。

鉛弾規制の動きは当然の流れといえる

 鉛という物質は太古の昔から利用されてきたわけですが、その毒性が知られるようになるまで、人間社会にも多くの健康被害を出してきました。
 よって工業などの業界では、すでに鉛不使用(リードフリー)が当たり前になっています。この時代的な流れを踏まえると、狩猟業界に鉛規制がおよぶのも”当然の流れ”だといえます。

どこまで規制が及ぶのか?

 
 以上でお話したように鉛弾規制は、時代的にも狩猟者が受け入れていかなければならない流れだと言えます。 

・・・まぁ、実を言うと。

 現・環境大臣の小泉進次郎の奥さんである滝川クリステル氏は、野鳥の鉛被害問題を取り扱う環境活動家だったりします。小泉氏も2019年の就任時点で鉛規制について言及をしていたため、遅かれ早かれメスが入るのは逃れられない話だったといえます。

 さて、規制されるのはしかたが無いとして、問題となるのは『どこまで規制が及ぶのか?』です。

 

クレー射撃用の鉛弾も所持禁止?

   鉛弾規制で最もやっかいなのは、『クレー射撃の鉛弾も禁止』になる可能性です。
「環境省は”狩猟用の鉛弾を規制”って言ってるから、クレー射撃用は関係ないだろ?」と思われるかもしれませんが、実は北海道で、ちょっとマズイ話が出ています。

 というのも、先んじて鉛弾が規制されている北海道ですが、いまだに鉛中毒の猛禽類があとをたたないようです。これについて鳥類保護活動家の中には

「射撃で使う鉛弾が流用されているに違いない!」

「射撃用を含めたすべての鉛弾を規制すべき!」

という話が出ているのです。この意見は・・・まぁ、”邪推”なんですが、オランダやスウェーデンなどの国では2000年代に、クレー射撃における鉛散弾使用は禁止になっています。
「日本でもスポーツ用を含めて鉛の使用禁止!」になる可能性は、無いとは言えません。

有害鳥獣駆除に使用する鉛弾は?

 狩猟制度については、鉛弾が規制されるのはしかないと言えます。すでにライフル銃の使用だったり、最大口径の決まりだったりと、銃の規制は時代と共に増えているわけですし。狩猟はあくまでもレジャー。ルールのなかで行う遊びです。
 しかし、有害鳥獣駆除や管理捕獲では話が違います。この2つはレジャーの狩猟ではなく業務です。弾を購入するために公安委員会から許可を貰うときも、「狩猟用途」と「有害鳥獣駆除用途」は別枠。残弾数も分けて管理する必要があります。これを一色単に規制されては、業務に支障をきたします。
 釣り人(遊び)と漁師(仕事)で使用できる漁具の規制が異なるように、狩猟者(遊び)と捕獲従事者等(仕事)の規制は分けて考えるべきです。規制がどこまで及ぶのか・・・気になる所です。

空気銃のペレットは?

 規制では「ライフル銃、散弾銃の鉛弾を規制」とありますが、空気銃はセーフ・・・なのでしょうか?法律的にも空気銃は、猟銃とは別の扱いですし、空気銃の弾(ペレット)はライフル弾よりも重量が小さく、散弾銃のようにばらまく心配はありません。
 エアライフルのペレットにも非鉛装弾というのはすでに存在します。しかし、対応するペレットの種類が少なく、7.62mmの大型口径や4.5mmの小型口径に合うものもほとんどありません。
 ペレットとの相性が大きく影響するエアライフルにおいて、ペレットの選択肢が少なくなるというのは、エアライフルハンティングに大きな影響が出そうです。

大日本猟友会はどう動く?

 以上のように、鉛弾規制がどこまで適用されるのかわかりませんが、このような状況で動かなければならないのが大日本猟友会です。
 以前、「猟友会は本当に必要なのか?」というお話の中で触れましたが、大日本猟友会という存在は日本の狩猟業界に欠かせない組織です。
 ただ、その必要性は、女性狩猟者を増やしたり、新しいハンタージャケットを作ることではありません。

代議士へのロビー活動

ただこれだけです。

 規模こそ全然違いますが、大日本猟友会は経団連や日本医師会のような利益団体(圧力団体)です。団体の会員などから集めたお金を使って、代議士の”センセイ”たちにたっぷり献金を行い、政治的決定に対して団体の有利になるように交渉してもらうこと、これが義務であり、存在意義です。
 そのような大日本猟友会が、もし今回の規制で上手く折り合いをつけることができなかったとしたら・・・。大日本猟友会というハコ自体は必要ですが、その中にいる経営陣は見直される必要があります

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代替品はどうなるか

 鉛弾の規制がどこまで及ぶかは今後の課題として、狩猟で使用できなくなっていくのは避けられない事実です。それでは、鉛に代わる弾にはどのような物があるのでしょうか?

鉛の代替となる金属は?

 鉛(No.82)という金属は、比重が大きく、柔らかいという特性を持ち、しかも地救上に大量に存在します。そのため鉛は、少量でも重量があり、加工がしやすく、安価に製造ができ、ライフリングにもピッタリと張り付く…といったメリットから、長らく銃弾に使われてきたわけです。このような鉛が使用不可になるということは、鉛以外の別の金属で代替する必要があります。

 鉛と似たような性質を持つ金属に、オスミウム(No.76)やイリジウム(No.77)があります。この二つは鉛に比べて比重が大きいため、弾としての性能は申し分ありません。しかし、希少資源なのでいかんせん値段が高いです。1㎏で1千万近くなります。それよりも安い金属に白金(No.78)、金(No.79)がありますが、これでも高すぎて実用的ではありません。
 安くて比重の大きい物質に『劣化ウラン』がありますが、当然のことながら放射性廃棄物を使うわけにはいきませんし。

素材
硬さ(鉛との比)
比重(鉛との比)
kg価格(鉛は204円)
鉄系鋼鉄(スチール)約5~8倍約0.7倍16円
軟鉄(ソフトスチール)約0.7倍16円
非鉄系ビスマス約1~2倍約0.9倍100万円
タングステン約2倍約0.9倍4,730円
スズ約0.5倍約0.7倍3,846円
約3~5倍約0.8倍735円

 以上を踏まえ、現実的に使用されている弾として、鉄系(スチール製)軟鉄製非鉄系(ビスマス化合物、タングステン、スズ、銅など)が存在します。これらの弾は無毒性弾と呼ばれ、鳥類が誤飲したとしても毒性を示すことなく体外に排出されると言われています。

銅弾の特徴

 北海道の鹿撃ちなどでは、すでに銅弾が主流ですが、銅は鉛と比べて3倍以上硬いため、弾頭が潰れやすいように加工されています。
 例えば、銅をプラスチックでつないで命中時に広がりやすくしたり、くぼみが設けられていたりします。空気抵抗を減らすためにプラスチックの先(チップ)がついている物もあります。

「硬い」ということは、獲物に命中しても貫通しやすいということです。そのため、北海道の広大な大地でエゾジカを狙撃するようなシーンでは特に問題ないのですが、本州の狭い森林で猟犬を使った巻き狩りをするさいには注意が必要です。貫通した弾が石や岩に跳ね返り、猟犬や他のハンターに当たる危険性が高くなるためです。

 使用する銃に対する影響ですが、ライフルの場合はもともと鉛弾に銅合金のジャケットが覆っているので、特に問題は無いと考えられます。軽い弾頭が無い、または高価になるぐらいですね。「ライフリングに銅が付着して取りにくい」といった話もありますが、モリブデンペーストを塗っておけば改善するのだとか。
 ただ、散弾銃(サボット銃・ハーフライフル)だと、精度がでにくいといった話が聞かれます。「横転弾がよく起きる」といった話も聞こえてきますね。

スチール弾の特徴

 鉄系素材であるスチールやソフトスチールは鉛よりも値段が安いため、今後本格的に鉛弾規制が進むと、安いスチール弾が流通するかもしれません。ただし、ライフル銃におけるスチール弾の使用は、従来の銃身では耐えきれず破損する危険性が高いそうです。

 散弾の場合は、弾はワッズカップに入っているため、銃身を傷つけることはありません。しかし、銃口のしぼり(チョーク)のところで力が加わり、銃口を破壊してしまう”可能性がある”とのこと。「1/2しぼりまでなら大丈夫」という人や「フルチョークでなければOK」など、色んな意見がありますが、実際のところちゃんとしたデータがありません。

 それとスチール散弾で言えば。カモ撃ちではしばしば、鉛弾が入ったままの肉を噛んでしまうことがあります。このとき鉛なら「グニッ!」で済みますが、スチールだと「ガチンッ!」と痛い思いをします。下手すると歯が折れるかも。狩猟に金属検出器が必須になる日が来るかもしれません。

その他非鉄系弾の特徴

 非鉄系のビスマスやタングステン・マトリックの弾は、従来の銃身でも安全に発射できるとされています。ただし、素材が高価なので、弾の値段も高価。鉛弾が1発当たり数十円のところが、ビスマスやタングステンでは100~200円近くします。カモ猟でバカスカ撃つ気にはなれない価格ですね。
 ただ、値段に関しては、流通量が増えると値段は下がっていくものなので、今よりは少しマシになるかもしれません。性能においても、ビスマス散弾やタングステン散弾は、昔はパターンが良くなかったそうですが、最近は改善してきているのだそうです。

おわりに

今回は『鉛弾規制』についてお話をしました。
鉛弾規制については、野鳥の保護のために必要不可欠な話しだと思います。新しい狩猟の流れとして非鉛弾の使用に慣れていくべきでしょう。・・・ただ、唯一怖いのが環境大臣の動向ッ!

「環境に悪いから、鉛弾全部規制ね。例外なし」

とか、普通~に言い出しそうで恐いッ!
頼む、頼むから

”余計なこと”だけはしないでくれ!!

・・・そう願っております


Author情報
東雲輝之

株式会社チカト商会の代表取締役兼、副業猟師。狩猟の継続発展・産業化・国際展開などを目標に事業展開をしています。 本人著書として『狩猟の教科書シリーズ』(秀和システム)、『初めての狩猟』(山と渓谷社)など。子育てにも奮闘中。

Twitter:東雲輝之



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